オープニングイベントでは、完成したばかりのクリーンルームも披露された。建物の1階がユーティリティールーム、2階がクリーンルームとなっている。クリーンルームにつながる廊下には、サプライヤー/パートナー企業のポスターがずらりと並ぶ。
クリーンルームは、廊下から窓越しに見学が可能で、設置した検査装置やダイサーが稼働している様子を見ることができた。なお、ダイサーを操作するオペレーターはヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着していて、オペレーターが見ている映像をそのまま外部モニターに転送し、見学者も見られるようになっていた。
現在、クリーンルームに装置は数台しかなく、これから本格的に導入して立ち上げていく。江本氏によれば、装置は2022年内に立ち上げ、同じく年内にも最初のパイロットラインを稼働する計画だという。
クリーンルーム上部にはAMHS(Automated Material Handling System)が設置され、縦横無尽に動き回っていた。AMHSが導入されているのは、TSMCジャパン3DIC研究開発センターでは量産仕様の技術開発を行うからだ。「当センターでは、Copy Exactly(完全な複製)で台湾など各地の工場に適用できる技術を開発する」(江本氏)
TSMCジャパン3DIC研究開発センターで働く従業員の数は、約100人を想定。半数は台湾のスタッフで、あとの半数は日本で雇用していく計画だ。台湾の3D IC開発チームとのすみ分けについては、「日本では、より材料に重きを置いた研究開発になる」(江本氏)という。
さらに、日本に開発拠点を置くことのメリットについて、江本氏は「スピード」と断言。「最大のメリットは圧倒的なスピードだ。エンジニア同士がひざを突き合わせて開発を進められるというのは大きい」と語った。
なお、同センターでの開発ロードマップやタイムスケジュールについては明らかにせず、「1〜2年でできるようなものではない」と述べるにとどめた。
半導体ICではさらなる微細化が進む中、チップの製造コストは増加の一途をたどっている。江本氏は「3D積層であれば、もっと自由にチップを組み立てることができる。例えば、5nmノードで製造したチップを積層すれば、より安い初期投資で優れた機能を実現できる可能性もある。その方が(プロセス開発や設備に巨額の投資をするよりも)よいアプローチなのではないか、ということに、5年後くらいにマーケットが気づいてくれたらと思っている」と語る。「3D ICの市場を拡大していくことが重要だ。3D IC技術を早期に立ち上げて市場全体を拡大し、サプライヤーもスケールメリットを得られて、業界全体がWin-Winとなる。そんなシナリオを考えている」(同氏)
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