今回は、1981年から1985年の主な出来事を報告する。ついにフラッシュメモリ(フラッシュEEPROM)が登場する時期だ。
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の会場では最近、「Flash Memory Timeline」の名称でフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表を壁にパネルとして掲げるようになっていた。現在は、FMSの公式サイトからPDF形式の年表をダウンロードできる(ダウンロードサイト)。
この年表は1952年〜2020年までの、フラッシュメモリと不揮発性メモリに関する主な出来事を記述していた。とても参考になるので、その概略をシリーズで説明する。原文の年表は全て英文なので、これを和文に翻訳するとともに、参考となりそうな情報を追加した。また年表の全ての出来事を網羅しているわけではないので、ご了承されたい。なお文中の人物名は敬称略、所属や役職などは当時のものである。
前回は、マスクROMの起源について解説した。原文の年表には記述されていなかった内容である。今回は再び年表に戻る。1981年から1985年の主な出来事をご報告しよう。
前々回で述べたように、1980年にはインテル(Intel)が「電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリ(EEPROM:Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory)」を発売した。記憶容量が16Kビットの「2816」である。
しかしインテルは、EEPROM事業にあまり積極的ではなかった。当時の主力製品であるUV-EPROM(紫外線消去型EPROM)の販売に悪影響を及ぼすと見なされたからだ。このため、有力なEEPROM技術者が相次いでインテルを退職し、ベンチャー企業を設立していった。
ベンチャー企業設立の中心人物となったのが、インテルで16KビットEEPROM「2816」を設計したGeorge Perlegosである。George Perlegosは1981年に元インテルの技術者とともにEEPROMの開発ベンチャー「シークテクノロジー(SEEQ Technology)」を設立する。さらに1984年には、マイコン用不揮発性メモリの開発ベンチャー「アトメル(ATMEL)」を創業した。
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