カリフォルニア大学ロサンゼルス校と東北大学、ジョンズホプキンス大学の日米共同研究チームは、ナトリウムイオン電池の負極に適したハードカーボンからなる連続周期構造の「カーボンマイクロラティス」を3Dプリンタで作製した。従来の粉末ペレット電極に比べ、電極面積当たりの容量が4倍に向上したという。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校と東北大学、ジョンズホプキンス大学の日米共同研究チームは2022年7月、ナトリウムイオン電池の負極に適したハードカーボンからなる連続周期構造の「カーボンマイクロラティス」を3Dプリンタで作製したと発表した。従来の粉末ペレット電極に比べ、電極面積当たりの容量が4倍に向上したという。
研究チームは今回、液晶マスク型の光造形3Dプリンタを用い、連続的3次元構造を有する光硬化性樹脂の前駆体を作製した。この物質を真空下1000℃で熱処理することにより、構造を維持したまま60%収縮させ、100〜300μmの構造単位からなるカーボンマイクロラティスを作製することに成功した。
実験では、作製したカーボンマイクロラティスを、ナトリウムイオン電池負極として用いた。この結果、構造単位を微細にしていけば、充放電特性が向上することを確認した。作製したカーボンマイクロラティスは、結晶性を持たない「ハードカーボン」と呼ばれる構造になっている。
このため、ナトリウムイオンの充放電において、さまざまな金属イオン電池候補の中でも優れた相性を示すという。この特性を利用し、充放電の各段階で電極を回収、洗浄した。そしてX線回折法により、ナトリウムイオンの侵入がハードカーボン内部の構造に与えるメカニズムを可視化することにも成功したという。
研究チームは今後、数値シミュレーションによる周期構造の最適化を行い、性能のさらなる向上を目指す。さらに、光造形方式を応用し、マイクロラティス陽極を用いたナトリウムイオン電池の開発や、他の金属イオン電池に適したマイクロラティス電極の開発などに取り組む方針である。
今回の研究成果は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の勝山湧斗氏(博士課程学生)やRichard B.Kanerディスティングイッシュトプロフェッサー、東北大学の材料科学高等研究所工藤朗助教および、学際科学フロンティア研究所の韓久慧助教、ジョンズホプキンス大学の陳明偉教授、東北大学多元物質科学研究所の小林弘明講師、本間格教授らによるものである。
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