龍谷大学は、単一分子で純度が極めて高い白色の蛍光発光を示す、新しい「有機材料」を発見した。有機ELディスプレイなどへの応用が期待される。
龍谷大学先端理工学部内田欣吾教授研究室の中川優磨氏は2022年8月、単一分子で純度が極めて高い白色の蛍光発光を示す、新しい「有機材料」を発見したと発表した。有機ELディスプレイなどへの応用が期待される。
内田研究室は長年、フォトクロミック化合物の「ジアリールエテン」について研究を行ってきた。ここで得られた多環芳香族化合物「1ar」の結晶は、分子内で青色と黄色の発光現象が同時に見られ、これらの蛍光が混じり合うことで、白色の蛍光発光になることを見いだした。
「1ar」の蛍光発光スペクトルを観察したところ、青色と黄色のスペクトルを確認することができ、蛍光寿命が異なることなどが分かった。国際照明委員会のCIE標準表色系である(CIE)1931の座標値は(0.31、0.30)で、極めて純度が高い白(純白値=1/3、1/3)であった。蛍光量子収率も0.12となり、実用レベルの0.1を超えた。
UV光(波長365nm)を照射する前(a、c、e)と、照射中(b、d、f)の「1ar」結晶。(g)1ar結晶の正規化された吸収スペクトル、(h)1ar結晶の蛍光発光スペクトル、(i)測定した蛍光寿命、(j)発光した1ar結晶のCIE1931座標(クリックで拡大) 出所:龍谷大学中川氏は、結晶のX線構造解析も行った。この結果、「1ar」には2種類の回転異性体が存在し、へリンボーン状に積み重なっていることが分かった。2種類の回転異性体を青色と黄色の結晶構造で表したところ、青色分子は重なりが少なく、分子間の距離も離れているため、単分子的な青色蛍光を示した。
これに対し黄色分子は重なり部分が大きく、分子間距離も小さいため、2分子的なエキシマー発光を示した。これらが合わさることで、白色の発光が得られた。こうした構造は、結晶が成長する時、自発的に形成されるという。
有機エレクトロニクス関連、医療分野などに注目
東北大ら、有機リチウムイオン電池で4V動作を実証
化学ボロフェンによる「無機液晶デバイス」を開発
有機材料を用いた蓄光発光材料の高性能化に成功
光照射でフレキシブル有機電子回路の特性を制御
日本触媒、有機EL用電子注入材料をNHKと共同開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング