化学ボロフェンによる「無機液晶デバイス」を開発:350℃の高温でも液晶状態を保持
東京工業大学は、神奈川県立産業技術総合研究所と共同で、化学ボロフェンによる「無機液晶デバイス」を開発した。この材料は350℃という高温でも液晶状態を保持できるという。
東京工業大学科学技術創成研究院の神戸徹也助教と山元公寿教授らの研究グループは2022年2月、宍戸厚教授や久保祥一准教授らの研究グループおよび、神奈川県立産業技術総合研究所のYan Dongwan博士研究員と共同で、化学ボロフェンによる「無機液晶デバイス」を開発したと発表した。この材料は350℃という高温でも液晶状態を保持できるという。
研究グループは今回、ホウ素単原子層物質であるボロフェンに着目。研究グループはこれまで、ボロフェンに類似した、単層のホウ素ネットワーク構造を有する新規材料(化学ボロフェン)を合成することに成功していた。
化学ボロフェンは、ホウ素と酸素、アルカリ金属からなる無機物で、二次元的に広がった大きな形状異方性を備えている。液体状態でも部分的に結晶性が保持されるため、液晶状態の発現が期待されていたという。
今回の研究により、合成した化学ボロフェンを加熱処理すると、結晶性が低下して流動性が発現し、液晶化することを発見した。分析した結果、ボロフェンの末端部位が脱水反応によって液晶化することが分かった。
偏光顕微鏡による化学ボロフェン液晶の観察像 出所:東京工業大学
開発した化学ボロフェンからなる液晶の大きな特長として2つ挙げる。1つは「構成元素が炭素を利用しない無機物である」こと、もう1つは「構成要素が二次元原子層物質である」ことだ。これらの特長から、350℃の高温でも液晶状態が保持できることが分かった。試作した光学デバイスに電圧を印加し評価したところ、有機材料による液晶では通常動作しない過酷な温度環境でも利用できることを確認した。
化学ボロフェンによる無機液晶の熱変化挙動 出所:東京工業大学
- Beyond 5G向けデバイスの研究開発を本格開始
シャープ、シャープセミコンダクターイノベーション(SSIC)、東京大学大学院工学系研究科、東京工業大学、日本無線の5者は、Beyond 5G(B5G)向けIoT(モノのインターネット)ソリューション構築プラットフォームの研究開発を本格的に始める。産官学が協力し、B5Gの用途拡大と国際競争力の強化を図る。
- MEMS技術を用い電子部品の薄型・小型化を実現
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とアルファー精工、旭電化研究所および、シナプスは、MEMS技術を用い、薄型かつ小型で優れた伝送特性を備えた電子部品の開発に成功した。素材として金属と樹脂を用いるため、第6世代移動通信(6G)システム向けのコネクターやソケットなどに適用することができる。
- 東京工大、溶液法で高性能のpチャネルTFTを開発
東京工業大学は、溶液法を用いて、優れた半導体特性を有する「pチャネル薄膜トランジスタ(TFT)」の開発に成功した。新規開発の材料ではなく、既存の物質同士をうまく組み合わせることによって実現した。
- 低下した全固体電池の性能を加熱処理で大幅改善
東京工業大学は、東京大学や産業技術総合研究所、山形大学らと共同で、低下した全固体電池の性能を、加熱処理だけで大幅に改善させる技術を開発した。電気自動車用電池などへの応用が期待される。
- 東京工大ら、SOT-MRAM素子の原理動作実証に成功
東京工業大学と米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校を中心とした国際研究チームは、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合(MTJ)を集積したスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)素子を試作し、読み出しと書き込みの原理動作を実証した。
- レドックス・フロー熱電発電で発電密度を1桁向上
東京工業大学の研究グループは、排熱源を冷却しながら発電を行う「レドックス・フロー熱電発電」で、従来に比べ発電密度を1桁以上高くすることに成功した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.