Murphy氏は、「メモリメーカーが需要を測定するための基準として使用しているビット成長率が、低迷している。DRAMの成長率が1桁台後半と伸び悩み、NAND型フラッシュメモリが10%台前半まで落ち込むとみられるため、ビット成長率は長期的に低下していくだろう」と説明する。
Micronで投資家向け広報活動部門担当バイスプレジデントを務めるFarhan Ahmad氏は、KeyBancのイベントにおいて、「2018年までさかのぼると、当時のNANDフラッシュのビット成長率は40%だったが、現在では28%に減少した。またDRAMは、2018年当時20%だったが、現在では10%台後半に下がっている」と述べている。
Ahmad氏は、ビット成長率が今後、過去の水準まで戻るのかどうかについては言及しなかった。
Wedbush SecuritiesのBryson氏は、「メモリチップ需要は長期的に、サプライヤーが生産量を増加させていく上での後押しとなるだろう」と述べる。
Micronによると、ここ数週間、スマートフォン/PCメーカーからの需要が縮小しており、その傾向は自動車やデータセンターなどの分野の企業にも広がっているという。
Murphy氏は、「こうした傾向はごく最近のことだ。初期の段階においては、市場がどう調整されるかを見極める必要があるだろう。だがわれわれは、これらの市場が明らかに低迷傾向にあるとみている」と述べる。
同氏によると、通常、市場調整の成果が現れるまでには、数四半期を要するという。
同氏は、「この先、何四半期を要することになるのか、明言することは難しい。顧客に関する見通しは、非常に複雑な状況にある」と付け加えた。
Micronの発表は、世界各国の自動車メーカーをはじめとするさまざまな企業が、工場閉鎖や人員削減を余儀なくされている半導体不足を解決する1つの方法としてCHIPS法が可決されたタイミングで行われた。Wedbush SecuritiesのBryson氏は、「Micronは、米国の一連の刺激策によって、米国への投資を説得された格好だ」と指摘する。
「このようなCHIPS法により、米国は今や、新工場の建設場所として競争力のある選択肢になりつつある。特に現在の地政学的な状況において、より多様な製造拠点を持つことの利点を考えると、米国(または欧州)を拠点として検討する他の理由も間違いなく存在する」(Bryson氏)
現在、Micronの製造のほとんどが、コストの低い台湾、日本、中国などのアジア諸国で行われている。
台湾の市場調査会社TrendForceによると、増産を迫られたSamsung Electronics(以下、Samsung)やSK hynixなどの韓国メーカーは、価格面で妥協する姿勢を見せている。
TrendForceは2022年第3四半期の消費者向けDRAMの価格下落は「当初予想の8〜13%から13〜18%に拡大する」と8月10日付のレポートで述べており、他のサプライヤーも追随せざるを得ない状況となっている。
Micronは、将来的により良い価格で販売することを想定し、メモリの在庫を増やす計画だ。
Murphy氏は、「当社は、市況が弱いから在庫を増やしているのだ。われわれは高品質製品に最高の価値をもたらすために努力しており、ビジネスからは一歩引いている」と語っている。
Ahmad氏は、「生産コストの低下が年率40%に達していた10年前は、在庫を抱えることは非常に困難だった。しかし、現在は在庫を抱えることは大きな問題ではない」と説明している。
Micronにとって大きな競争相手となるのは、SamsungとSK hynixだ。この3社はメモリ市場で圧倒的なシェアを持つが、近年、YMTC(Yangtze Memory Technologies Co.)など中国のライバル企業との新たな競争に直面している。
Murphy氏は、「彼らは着実に成長しており、現在では顧客との契約も取り付けている」と語った。報道によると、Appleは最近YMTCに注文を出したという。
「YMTCは中国政府から直接、多大な支援を受けている。彼らはNANDフラッシュ市場において懸念材料だ」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.