米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatthew Bryson氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「Micron Technology(以下、Micron)は、この先10年間の後半に米国内で400億米ドルの投資を行う一方、短期的には設備投資費を削減する計画を明らかにしているが、これは非常に理にかなっているといえる」と述べた。
米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatthew Bryson氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「Micron Technology(以下、Micron)は、この先10年間の後半に米国内で400億米ドルの投資を行う一方、短期的には設備投資費を削減する計画を明らかにしているが、これは非常に理にかなっているといえる」と述べた。
世界第3位のメモリメーカーであるMicronのCEO(最高経営責任者)を務めるSanjay Mehrotra氏は、2022年8月9日(米国時間)、米国の国内製造を促進する法律「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)の可決に伴い、400億米ドルの投資を行うと発表した。その同じ日に、同社のCFO(最高財務責任者)であるMark Murphy氏は、投資家たちに向けて、2023年の設備投資費を削減する予定であることを明らかにした。
Murphy氏は、KeyBanc Capital Marketsが主催した投資家向けイベントにおいて、「Micronの2023会計年度の設備投資額は、前年度比で減少する見込みだ。供給の調整を必要とする市場状況に対応するためだ。これを通じて、生産能力の適正化するための方法を見つけ出す必要がある」と述べている。
Micronは、米国内で400億米ドルの資金を投じる予定であり、CHIPS法が提供する520億米ドルのインセンティブから補助金を獲得したい考えだ。CHIPS法は、半導体製造を米国内に回帰させると同時に、中国への投資を制限することを目指す。「CHIPS」は、「Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors(対訳:半導体の生産に役立つインセンティブを創出する)」の略であるが、これは、半導体部品の域を超えた法案である。
Murphy氏は2022年8月9日、「Micronは本日、CHIPS法によるサポートに基づき、米国内での投資計画を発表した。これは、当社が考える『DRAMの持続的な成長』を後押しすることになるだろう。この先10年間の後半のDRAM需要をサポートするための投資だといえる。短期的には、市況は当初の予測よりも悪化していることから、われわれとしてはこうした状況に対応していきたい考えだ」と述べている。
Murphy氏によると、Micronは2022会計年度の設備投資費として120億米ドルの予算を充てていたが、2023年度はこれを下回る見込みだという。ただし同氏は、2023年度の設備投資費に関する詳細は明かさなかった。
2年以上前から続いている半導体不足は、半導体業界のメモリ市場が過剰供給の状態へと移行していることを受け、終息を迎えようとしている。Wedbush SecuritiesのBryson氏は、「Micronをはじめとするさまざまなメモリメーカーが、短期的な設備投資計画を縮小する方向に向かっていくのは、とても理にかなっている」と述べる。
「新工場を、特に新たな敷地に建設する場合、複数年にわたって取り組んでいく必要がある。現状、3〜4年後に必要となる工場建設のための敷地計画が現在行われるのは、当然のことだ」(Bryson氏)
さらに同氏は、「Micronが、2023会計年度の設備投資費を削減したとしても、DRAMの供給過剰が永遠に続くわけではないため、同社の設備投資費は2030年までに、合計で700億または800億米ドル以上の投資を行うことになるだろう。Micronが、米国内で数件の工場を建設するという選択肢をとった場合、その設備投資額全体の約半分が米国内に割り当てられることになる」と付け加えた。
Bryson氏によれば、Micronの設備投資費の減少傾向は、現在のマクロ経済の低迷の度合いや、中国の需要が回復した場合などの状況に応じて、やがて底を打つことになるとみられる。
「メモリおよび半導体市場全般において、唯一最大の逆風要素となっているのが、中国のスマートフォン需要の落ち込みだ」(Bryson氏)
米国の市場調査会社IDCによると、2022年第2四半期の世界スマートフォン出荷台数は、前年同期比で8.7%減少しており、これで4四半期連続の減少となる。
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