2016年に設立された英スタートアップのGraphcoreは、データセンター/クラウドでの機械学習に特化したプロセッサIPU(Intelligence Processing Unit)の開発を手掛ける企業だ。同社のIPUは金融、医療、自動車、消費者向けインターネットサービスなど、さまざまな分野で導入されている。Graphcoreの共同設立者兼CEO(最高経営責任者)のNigel Toon氏に、Graphcoreのビジネスの現状や、次世代IPU、日本での戦略について聞いた。
2016年に設立された英スタートアップのGraphcoreは、データセンター/クラウドでの機械学習に特化したプロセッサIPU(Intelligence Processing Unit)の開発を手掛ける企業だ。同社のIPUは金融、医療、自動車、消費者向けインターネットサービスなど、さまざまな分野で導入されている。
Graphcoreの共同設立者兼CEO(最高経営責任者)のNigel Toon氏はエンジニア出身で、(Intelが買収した)Alteraに13年間在籍していた。その後、3G(第3世代移動通信)モデムチップを手掛けるIcera(2011年にNVIDIAが買収)を立ち上げるなど、起業にも半導体技術にも深い知見を持つ人物だ。EE Times JapanはToon氏に、Graphcoreのビジネスの現状や、次世代IPU、日本での戦略について聞いた。
――創業して6年が経過しました。GraphcoreのIPUは着実に進化していますね。
Nigle Toon氏 AIでは、演算処理をするときのデータの構造そのものが従来とは異なっている。現在、多くの企業が、NVIDIAのGPUなどを使ってAIモデルを作成しているが、次世代のAIモデル構築では、より多くのデータや、異なる種類の計算エレメントが求められる。IPUは、既存のAIモデルだけでなく、こうした次世代のAIモデル構築まで見据えて開発されている。
機械学習の業界標準ベンチマーク「MLPerf」では、従来のGPUに比べると、当社のIPUは同等またはそれ以上の性能が出ることが示されている。
近年注目されているGNN(グラフニューラルネットワーク)でも、同分野の第一人者であるオックスフォード大学教授、Michael Bronstein氏と共同でIPUの評価を行った。その結果、GNNアーキテクチャの一つであるTGN(時間的グラフネットワーク)のトレーニングを、NVIDIAのGPUに比べ約11倍高速に行えることが明らかになった。
――2022年3月には、TSMCと連携して開発した3D Wafer on Wafer(以下、WoW)技術を用いたIPU「Bow IPU」を発表しました。Bow IPUに対する顧客/市場の反応はいかがでしょうか。
Toon氏 Bow IPUのブレークスルーは、同等の電力で、より高い性能を実現できる点だ。市場の反応は極めて良く、手応えを感じている。
Bow IPUは、当社のIPUの方向性を示す製品にもなっている。半導体製造プロセスは、7nm世代、5nm世代、3nm世代と移行しているが、トランジスタ数の観点で見れば「ムーアの法則」のスピードは減速している。より集積度を上げるにはチップの積層、つまりWoWが求められていると考えている。IPUの今後も、この積層がキーになる。もう一つはメモリだ。より高帯域かつ大容量のメモリが必要になってくる。
――メモリも増強していく必要がある中、メモリ技術として注目しているものはありますか?
Toon氏 詳細は言えないが、当社の戦略的投資家の1社であるSamsung Electronicsと密に連携を取りながら、革新的な技術の実現に向けて取り組んでいる。既存のメモリ技術を、ユニークな方法で活用するものだ。
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