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クラウドAI特化のチップで手応え、超高知能AI開発もGraphcore CEOに聞く(2/2 ページ)

» 2022年09月16日 14時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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NVIDIA製GPUの“半額”で同等性能を実現

――クラウド側の機械学習においては、NVIDIAも力を入れています。

Toon氏 NVIDIAは、この分野で非常にうまくビジネスを展開している。データセンターやクラウドでの機械学習においては、常に高性能プロセッサのプラットフォームが求められていて、その点では当社のIPUも十分に(NVIDIAのプラットフォームに)対抗できる製品だ。

 コスト面でもGraphcoreのIPUに利点がある。MLPerfにおいて、NVIDIAのGPUと同等の性能を出すに当たり、NVIDIAよりも低いコスト、具体的には約半分のコストで実現できる。

 もう一つ重要なのがソフトウェアだ。Graphcoreは「Poplar SDK(ソフトウェア開発キット)」を用意していて、これを活用することでIPU搭載マシンのスケーリングなどが容易にできるようになっている。

――ソフトウェアのエコシステムを拡張するのが重要だということですね。

Toon氏 その通りだ。ユーザーがIPU用に最適化した幅広いモデルを簡単に導入できるよう、新しいモデルやサンプルをオープンソースとして公開している。TensorFlowやPyTorchといった主流のフレームワークだけでなく、Baiduの「PaddlePaddle」など新興のディープラーニングプラットフォームにも対応している。

“超高知能AIコンピュータ”を2024年にも投入へ

――2022年3月に最新のBow IPUを発表したばかりですが、今後のIPU技術のロードマップについて教えてください。

Toon氏 実は全く同じ時期(2022年3月)に、次世代IPU技術として、人間の脳の能力をしのぐ「超高知能AIコンピュータ」を開発していることを明らかにした。われわれはこれを、人間の脳の能力を超えるマシンについて1960年代の論文で記載したJack Good氏にちなみ、「Good Computer」と名付けた。

 そもそも人間の脳は、1つの生体神経ネットワークシステムに約1000億個の神経細胞と100兆個以上のパラメーターを持つ、非常に複雑な“計算装置”だ。われわれは、Good Computerで、10エクサフロップスを超えるAI浮動小数点演算や、500兆個のパラメーターを持つ大規模AIモデルへの対応などを目指して開発を進めている。500兆個は、既存の大規模なAIモデルに比べて約1000倍のパラメーターになる。これだけ多くのパラメーターを持てれば、知識(ナレッジ)のキャパシティーがより大きくなる、つまり、さらなるインテリジェンスが生み出されることになる。医療や創薬、自動運転といった分野で、イノベーションの実現に大きく貢献できるのではないか。

 Good Computerは2024年の市場投入を目指していて、IPUの後継技術として展開していく計画だ。

 Graphcoreは2022年6月に、AIモデル構築を手掛けるドイツAleph Alphaとパートナーシップを締結した。これによって、Aleph Alphaの高度なマルチモーダルモデルを、われわれのIPUシステムや開発中のGood Computerに最適化した次世代AIモデルを研究、開発できるようになる。

日本では製造業分野もターゲットに

――2021年1月に日本法人を設立し、約1年半が経過しました。日本市場でのビジネスの進捗はいかがですか。また、日本市場をどのように見ていますか。

Toon氏 ビジネスは順調に推移している。高性能なAIソリューションの提供に向けNECと提携するなど、パートナーシップも発表している。詳細はお伝えできないが、日本の重要な大手顧客とも取引が進行中だ。それ以外でも、日本企業と進めているプロジェクトがあり、喜ばしく思っている。

 AIでは、多くの顧客が常に新たなソリューションを模索している。多くのイノベーションが起きているので、日本の顧客の皆さんも、オープンな見解を持っているという印象を受ける。現在は主流であるGPUも、そもそもはAIに向けて開発されたテクノロジーではないので、顧客各社は、AIに特化した、より新しくより優れたプロセッサの登場を期待していると感じる。

――日本で特に注力したい市場はどこですか。

Toon氏 まずは製造業だ。自社で製造した製品の外観検査やX線検査などにAI技術が活用され、既に当社の製品も導入されている。その他、金融や消費者向けインターネットサービスなども、ターゲットとしている。

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