2020年、TSMCはSamsung ElectronicsやIntelなどら大手半導体メーカーに先駆けて、アリゾナ州に最初の120億米ドルを投じた。ドナルド・トランプ前米国大統領の政権は、衰退する米国の半導体産業を復活させ、中国の成長を鈍化させる戦略の一環として、TSMCとの合意成立に貢献した。TSMCのこの投資は、当時世界最大のスマートフォンメーカーだった中国HuaweiへのTSMCの先端半導体供給を米国が阻止した時期に発表された。
業界の低迷を背景に他の半導体メーカーが投資抑制に走る中、TSMCの投資拡大が実現した。TechInsightsのアナリスト、Dan Hutcheson氏によると、TSMCの今回の決定は米国への信認を示すものだという。
同氏はEE Timesに対し、「TSMCの発表は、米国の半導体サプライチェーンを再構築するための強いコミットメントだ。景気後退に直面しつつも継続するこの投資は、TSMCがサプライチェーン持続性において極めて重要な役割を担っていることを理解し、それを積極的に負担しようとする意思の表れだ」と述べている。
Technalysis Researchのチーフアナリスト、Bob O'Donnell氏は、TSMCが雇用と投資を拡大する一方で、ライバルであるIntelは正反対の行動をとっていると指摘する。
O'Donnell氏は、「TSMCがあらゆる市場に向けて半導体を製造しているのに対し、Intelは主にPC市場への依存度が依然として高いため投資と雇用を削減している。また、TSMCは極めて強力なファウンドリービジネスを持っているが、Intelはまだゼロからそれを構築しているところだ」と説明した。
Hutcheson氏は、「TSMCが米国で製造することで生じる高いコストは対処可能なはずだ。その根拠の一つは、ファウンドリーを含め、他の企業が米国で製造しても利益を上げられると証明していることだ。人件費は、コスト構造全体の中ではごく一部だ。設備や材料など、コスト要因のほとんどはグローバルな調達に起因するものなので、ローカルコストの優位性はある。アリゾナ州に関しては、米国で最も低コストに工場を建設できる州だ」と説明した。
TSMCによるアリゾナの2工場は、フル稼働すれば年間60万枚以上のウエハーを製造することになり、最終製品の推定価値は400億米ドル以上になる見込みという。
第1工場は、当初5nmノードの生産を目標としていたが、現在は2024年に4nmで製造を開始する予定だ。
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