FLOSFIAは、パワー半導体「酸化ガリウム(Ga2O3)」にJBS(ジャンクションバリアショットキー)構造を適用し、p型半導体「酸化イリジウムガリウム(α-(IrGa)2O3)」を埋め込んで結晶を成長させることにより、リーク電流を抑えることに成功した。
京都大学発のベンチャー企業であるFLOSFIAは2023年1月、パワー半導体「酸化ガリウム(Ga2O3)」にJBS(ジャンクションバリアショットキー)構造を適用し、p型半導体「酸化イリジウムガリウム(α-(IrGa)2O3)」を埋め込んで結晶を成長させることにより、リーク電流を抑えることに成功したと発表した。
FLOSFIAは京都大学と共同で、酸化ガリウムと同じ結晶構造を持つp型半導体「酸化イリジウム(α-Ir2O3)」を、2016年に開発した。今回、SiC(炭化ケイ素)ダイオードなどで用いられているJBS構造を、酸化ガリウムデバイスに適用した。
具体的には、酸化ガリウムn-層の一部にトレンチ構造を作製し、新たなp型半導体を埋め込み、独自のミストドライ法を用いて結晶成長を行った。作製したチップサイズは約0.9mm、トレンチ構造のラインアンドスペースは各1μmである。
実験では、JBS構造の試作チップに逆方向電圧を印加し、酸化イリジウムガリウムの埋め込み構造によるリーク電流の抑制効果を確認した。温度を25℃から125℃に上昇させると、抑制効果はさらに高まることを確認した。
今回用いた酸化イリジウムガリウムは、バンドギャップが約5eVと極めて大きく、ホール濃度は1×1019cm-3と高い。このため、酸化イリジウムガリウムと組み合わせた酸化ガリウムデバイスは、SBDやMOSFET、IGBTといったパワー半導体デバイスとして、その特性を最大化することが可能になるという。小さいチップサイズで大電流を流すことができ、コストの低減も可能である。
FLOSFIAは今回の研究成果を、コランダム型酸化ガリウム(α-Ga2O3)パワーデバイス「GaO」シリーズの第2世代ダイオードより適用する計画である。その後は、MOSFETやIGBTなどにも酸化イリジウムガリウムを用いることにしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング