ファインセラミックスセンター(JFCC)は、ノベルクリスタルテクノロジーや兵庫県立大学などと共同で、X線の異常透過現象を利用し、厚み約0.7mmのβ型酸化ガリウム結晶内部の格子欠陥を短時間かつ非破壊で全数検出し、可視化することに成功した。
ファインセラミックスセンター(JFCC)は2022年12月、ノベルクリスタルテクノロジーや兵庫県立大学などと共同で、X線の異常透過現象を利用し、厚み約0.7mmのβ型酸化ガリウム(β-Ga2O3)結晶内部の格子欠陥を短時間かつ非破壊で全数検出し、可視化することに成功したと発表した。次世代パワー半導体に用いられるβ-Ga2O3結晶の高品質化が期待される。
β-Ga2O3結晶の欠陥分布を評価する方法として、「X線トポグラフィ観察法」などが用いられている。ところがGaを含むため、従来方法だと表面から深さ0.02mmまでの欠陥しか観察できなかったという。
そこで今回、異常透過現象を利用したX線トポグラフィ観察法により、結晶内部に存在する欠陥の空間分布や、欠陥の種類を識別できる情報などが得られるようになった。異常透過とは、原子面を節とする定在波が発生している状態では、X線の吸収が急激に減少する。このため、透過するX線の強度が著しく増大する現象である。
結晶内部に格子欠陥の領域があると異常透過が起こらず、局所的に透過波の強度が低下するという。こうしたことから、結晶全体に異常透過を発生させ、その状態で透過波の強度分布を観測すれば、X線の弱い領域に格子欠陥が存在していることを確認できるという。
実験では、透過波と回折波の強度を蛍光板で観測し、異常透過発生の有無を調べた。通常の強いX線吸収が起こる(異常透過が発生していない)状態では、透過波が極めて弱くなった。異常透過が発生している状態では、透過波と回折波の極めて強い2つのスポットが現れた。この状態で蛍光板を取り除き、カメラで透過波の強度分布を撮影すれば、X線照射領域内の欠陥分布が分かるという。
(a)は透過波と回折波の強度を蛍光板で観測し異常透過発生の有無を判定する実験の模式図、(b)は異常透過が発生しない状態の写真、(c)は透過波と回折波の極めて強い2つのスポットが観測された異常透過が発生する状態の写真[クリックで拡大] 出所:JFCC他今回は、欠陥の種類を識別することも可能にした。X線トポグラフィ観察法では、回折条件と格子欠陥の種類との相対関係によって、欠陥のコントラストが変わる。このため、複数の回折条件で同一場所の欠陥のコントラストを解析すれば、欠陥の種類が識別できるという。
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