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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

ローカル5Gと通信品質制御で遠隔カフェ接客の操作感を向上NTTが実証実験を実施

NTTは2023年1月17日、同社が開発した通信品質制御技術とNTT東日本が提供するローカル5Gを組み合わせることで、遠隔地の操作者が通信遅延によるタイムラグを感じない自然な遠隔ロボット操作を実現したと発表した。

» 2023年01月24日 14時30分 公開
[半田翔希EE Times Japan]

 NTTは2023年1月17日、オリィ研究所が運営する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」常設実験店で活用されている分身ロボット「OriHime-D」を使った実証実験において、NTTが開発した通信品質制御技術とNTT東日本が提供するローカル5Gを組み合わせることで、遠隔地の操作者が通信遅延によるタイムラグを感じない自然な遠隔ロボット操作を実現したと発表した。

 「分身ロボットカフェDAWN ver.β」は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病や重度障害で外出困難な人々が分身ロボット「OriHime」「OriHime-D」を遠隔操作しサービススタッフとして働くカフェで、オリィ研究所が2021年6月にオープンした。「OriHime-D」は、全長約120cmの分身ロボットで、遠隔操作して接客やものを運ぶなどの身体労働を伴う業務が可能だ。障がいや病気などの理由で外出困難な人々の雇用と活躍の場の拡大や、場所にとらわれない新たな働き方の促進が期待されている。

 実証実験は「NTT武蔵野研究開発センタ」(東京都武蔵野市)、「NTT中央研修センタ」(東京都調布市)、「分身ロボットカフェDAWN ver.β」(東京都中央区)を全長100kmの光ファイバーで接続し、カフェ内のローカル5Gを経由して、「武蔵野研究開発センタ」内から障がいのある操作者がカフェのサービススタッフ業務を行った際のロボット操作感およびアプリケーション間でのネットワークの性能評価を行った。

実証実験構成図 実証実験の構成図[クリックで拡大] 出所:NTT

 人間が操作する分身ロボットでは、会話や表情といった音声や映像によるコミュニケーションのほか、人や障害物を避けながらの移動などの精密な動作まで、状況に応じて臨機応変に行動できることが期待されている。「分身ロボットカフェDAWN ver.β」で使用されている分身ロボットは、店内に設置されたWi-Fiによって無線接続されているが、外部の電波との干渉などによる通信品質の低下が発生しやすく、タイムラグや通信断による操作の中断により、操作者のストレス増や操作精度の低下、カフェのサービス提供に支障が生じる問題があった。

 実証実験では、NTT東日本のローカル5Gを活用することで、従来のWi-Fiを用いた分身ロボット操作で発生していた無線通信の途中切断や映像品質劣化による遠隔操作のしづらさなどが解消するなど、分身ロボットの操作性向上を確認した。

 また、NTTはアプリケーション同士でやりとりされる通信パケットの通信優先度を集中制御する通信品質制御技術を新たに開発。同技術の活用により、数十ミリ秒以上の遅延量増加が発生する大容量のダミートラフィックをローカル5Gへ付加した条件においても、このダミートラフィックの影響を受けることなく低遅延を維持できることを確認した。

 NTTは、NTTクラルティと共同で実際の分身ロボット操作者にインタビューを実施。操作者からは「従来のネットワーク環境で感じていた操作に関わるストレスが低減でき、ロボット操作や接客でもネットワーク遅延を感じることなくスムーズに行えた」との意見が得られたという。

左=「分身ロボットカフェでの実証実験の様子」/右=NTT武蔵野研究開発センタの操作者 左=分身ロボットカフェでの実証実験の様子/右=NTT武蔵野研究開発センタの操作者[クリックで拡大] 出所:NTT

 今後は実証実験で使用した分身ロボットへの適用にとどまらず、製造工場や建設現場等で活躍する遠隔操作産業ロボットでも、ローカル5Gと通信制御技術、ロボティクス技術組み合わせて使用し、ネットワークの低遅延性能が求められる遠隔操作ユースケースへの展開を目指す。

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