近畿大学は、マンガン酸化物を用い3次元構造のナノ材料を合成することに成功した。合成した3次元構造のナノ材料が、光を熱に変換する触媒として高い効率で機能することも明らかにした。
近畿大学理工学部応用化学科の多田弘明教授や副島哲朗准教授らによる研究グループは2023年1月、マンガン酸化物を用い3次元構造のナノ材料を合成することに成功したと発表した。合成した3次元構造のナノ材料が、光を熱に変換する触媒として高い効率で機能することも明らかにした。
ナノ材料は、棒状やワイヤ状などさまざまな形状や構造にすることで、強靭(きょうじん)性や電気伝導性、熱伝導性を高めることができるという。例えば、触媒反応を促進させる「フォトサーマル触媒」や、効率的な光熱変換特性を示す「ナノワイヤアレイ」などへの応用例がある。ただ、フォトサーマル触媒で利用可能な光は、今のところ可視光に限られたり、ナノワイヤアレイ自体の合成には高価な機器が必要であったりして、広く普及させるには課題もあったという。
研究グループは今回、安価で入手も容易なマンガン酸化物を原料に選び、その一種である水酸化酸化マンガン(γ-MnOOH)のナノワイヤアレイについて、100℃以下の低温で合成する方法を開発した。その方法とは、マンガンイオンや過酸化水素、ヘキサメチレンテトラミンなどを水に溶かし、この液体に基板を入れてフタをし、乾燥機(加熱機)の中に入れる。そして85℃の環境に数時間置ければ、高密度で単結晶性のMnOOHナノワイヤを基板から成長させることができるという。
実験では、この材料を約400℃で加熱処理した。そうすると単結晶性ナノワイヤアレイ構造を保ちながら、β-MnO2ナノワイヤアレイに変換させることができた。このβ-MnO2ナノワイヤアレイは、可視域から近赤外域までの広範囲にわたる光を吸収できることが分かった。
研究グループは、o-フェニレンジアミン(OPD)から2,3-ジアミノフェナジン(DAP)への酸化反応を用いて、β-MnO2ナノワイヤアレイのフォトサーマル触媒活性を評価した。この結果、3次元構造のβ-MnO2ナノワイヤアレイでは、光照射下における活性が、暗所下に比べ2.5倍となった。
研究グループは活性向上の要因として、「ナノワイヤアレイの特異な3次元構造により、入射される光が多重散乱され、極めて高効率にβ-MnO2に吸収された」ことや、「ナノワイヤが高密度で成長したβ-MnO2ナノワイヤアレイでは、近傍に密集して存在するナノワイヤ同士による熱エネルギーの集中が起きた」ことを挙げた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.