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2023年、波乱の年に突入したメモリ市場新たなゆがみの影響大きく(2/3 ページ)

» 2023年02月14日 11時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]

サプライチェーン問題が、最適化と透明化に繋がる

 また、Le氏は、「Macronixは、供給上の障害や高まる需要に対応するため、当社の製品ミックスを3つの工場全体に広げて生産能力を最適化し、高密度化と3D技術の実装を可能にする戦略を取っている。今まさに、この波が来ているところだ」と述べる。

 特に自動車分野では、明らかに高密度化が必要とされている。Le氏は、「われわれは、特に自動車分野の中で、継続的な成長を遂げているニッチ市場に参入していく」と述べている。

 「サプライチェーン全体の透明性も非常に重要だ。Macronixは、製品と予測、自動車メーカーの要望とを、最適なバランスの状態に維持することに注力している」(Le氏)

 また、定期的に顧客企業と話し合い、可能な限り部品を割り当てることも重要だ。Le氏は、「一部の顧客にとって問題となっているのが、その発注数が、他のベンダー各社から部品を割り当ててもらう際に必要とされる数量に達していない、という点である。10万個規模でも数が少な過ぎるのだ」と述べている。

 「Macronixの場合、数量は一つの要素であり、もう一つ重要なのが、顧客との間でどのような長期的関係を維持できるかという点だ」(Le氏)

 一方、在庫サイクルは、数四半期から数週間へと大幅に短縮されている。顧客企業は、こうした在庫状況から、マイコンなどの製品を再設計する必要があるということを理解している。Le氏は、「Macronixは、自社で再設計を行うことで対応できる」と述べている。

 部品/材料不足に対応するためにデバイスを再調整しなければならなかったのは、自動車業界だけではない。また、メモリ需要の急激な増加は、リモートワークへの移行だけが原因というわけではない。AI(人工知能)アプリケーションおよびワークロードは、パンデミックとはほぼ無関係にその成長ペースを維持している。

Recogniの共同創設者でCEO、R.K. Anand氏 Recogniの共同創設者でCEO、R.K.Anand氏

 米国のAIスタートアップRecogniの共同創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるR.K.Anand氏は、「必要なメモリ量を決定するのは、アプリケーションアーキテクチャである。メモリ需要は、AIの場合は膨大な量になるが、リモートワーカーによるルーター需要の場合は明らかにそれより少なくて済む。しかし、メモリ量は少なくとも、かなりの数のルーターが普及したため、結局メモリ供給に大きな影響が及んだ」と述べている。

 同氏は、「このような場合、設計者が妥協点を見いださなければならない。特に、要件や必要部品の数をいかに低減するかが重要だ。そうすれば、供給量の大半を入手することが可能な強い力を持つバイヤーと割り当てを巡って戦わなければならないような広範な市場に、参入せずに済むからだ」と述べる。

新しい設計でより重要となる、代替策の確保

 Anand氏は、「スタートアップ企業は、AIや自動車など業界を問わず、自社にとって本当に必要なメモリ量を熟考しなければならない。新興企業は、設計点について検討するとともに、メモリや各種部品に関しては、最先端のものでなくとも、少なくとも世界各国で製造が可能な高い生産能力を備えた先端技術が適用されている製品を選ぶ、ということが重要である」と述べる。

 「重要なのは、サプライヤーやその他の選択肢を把握し、見通しを注視し、事前に調達することに意味があるかどうかという点に注目することである。供給先の選択肢は、1つ以上確保するべきだろう」(Anand氏)

 顧客が、供給不足のために別のサプライヤーを探さなければならない場合、それは企業にとってチャンスとなることがある。例えばAlliance Memoryの事業は、EOL(End-of-Life)製品シリーズを引き受けることで成り立っている。しかし、このようないわゆる“レガシー”メモリは、パンデミック以前から製品寿命が長い。現在でも、新型の医療診断装置でさえDDR3 DRAMで十分機能しているように、必ずしも全てのデバイスに最新型の高性能メモリが必要なわけではないのだ。

Alliance Memoryのプレジデント兼CEO、David Bagby氏 Alliance Memoryのプレジデント兼CEO、David Bagby氏

 米国のメモリメーカーAlliance Memoryのプレジデント兼CEOであるDavid Bagby氏は、「大手DRAM/NAND型メモリメーカーは、パンデミックによる供給不足の発生前から、大口顧客に注力していたため、中小企業が当社の在庫を求めるようになり、利益につながった。大企業でなければ部品を入手することができないのだ。われわれは、利益をもたらしてくれた自社在庫を誇りに思う」と述べている。

 「皮肉なことに、当社は、DRAM市場でのシェアは全体の約1%にすぎないが、顧客企業の数は市場のどのDRAMメーカーよりも多い。大手DRAMメーカーが応じるような大量の発注を必要としない、小規模の顧客をサポートしているからだ。当社は在庫維持について、大手メーカーの“ジャストインタイム”手法とは反対の考え方をしている。つまり、特にパンデミック初期、リモートワークに対応するためにPCやルーターなどの需要が急増した当時のように、パンデミック時代に適しているといえる」(Bagby氏)

 Bagby氏は、「Alliance Memoryのモデルが成功したということは、当社はもはやレガシーメモリのサプライヤーではなく、代替供給源として機能するということを意味する。われわれは現在、LPDDR4をはじめ、業界最先端のDDR4 DRAMを提供している」と述べる。

 同社は非公開企業として、成長を維持するために全ての利益を再投資することが可能である。特定の規模の顧客企業にターゲットを絞りながら、サプライヤー各社が生産量を削減した部品や、生産を終了した特定部品を買い占めてきたという。

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