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感染症の解析に貢献するPCR検査と遺伝子検査、迅速検査(後編)福田昭のデバイス通信(388) 2022年度版実装技術ロードマップ(12)(1/2 ページ)

「ウイルス性感染症とPCR検査、遺伝子検査」の後半部分を簡単に説明する。

» 2023年02月21日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

ご注意
 今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを推奨します。


DNAに特有の塩基配列を検出

 「2022年度版 実装ロードマップ」第2章「注目される市場と電子機器群」の第3節(2.3)「ヒューマンサイエンス」から「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)の概要を前後編で報告している。今回はその後編になる。

第2章第3節第2項(2.3.2)「メディカル」の目次 第2章第3節第2項(2.3.2)「メディカル」の目次。「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)の目次は筆者がロードマップ本体から作製したもの

 「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)は、以下の3つの項目で構成される。「1.感染症と非感染症に対する事業背景の違い」、「2.ウイルス性感染症とPCR検査、遺伝子検査」、「3.細菌性感染症と薬剤耐性、迅速検査の需要」である。前編では、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が流行する以前の感染症研究に関する状況と、COVID-19の大流行によって知られるようになった「PCR検査」の原理と手順を解説した。目次では「1.感染症と非感染症に対する事業背景の違い」および「2.ウイルス性感染症とPCR検査、遺伝子検査」の前半部分に相当する。

 後編では、「2.ウイルス性感染症とPCR検査、遺伝子検査」の後半部分を簡単に説明する。なお「3.細菌性感染症と薬剤耐性、迅速検査の需要」についてはロードマップ本体を参照されたい。

 前編ではPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)によってDNA(デオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid))を増やす手順を主に説明した。増やしたDNAから塩基配列を解読するのが次の段階となる。

 未知のDNAから塩基配列を読み取る代表的な手法(シーケンス法)は「サンガー(Sanger)法(サンガー・シーケンス法)」である。ただし、サンガー法が開発された時点(1977年および1975年)ではPCR増幅(1983年に考案、実証)が存在しなかった。現在ではPCR増幅とサンガー法の組み合わせによるシーケンス法(サイクル・シーケンス法)がサンガー法の主流になっており、またサンガー法自体も継続して改良されている。

次世代シーケンス(NGS)技術が遺伝子検査を普及させた

 サンガー法は、解析対象のサンプル数(総数)が少ない場合や塩基配列が短い場合は、きわめて有効である。コストが低くて比較的簡便な手法であり、現在でも広く使われている。一方で解析に一定の時間を要すること、感度があまり高くないこと、サンプル数が増えるとコストが大幅に増加すること、などの課題を抱える。

 サンガー法の弱点を補うべく、大量のサンプルを短時間で解析する手法として開発されたのが「次世代シーケンス(NGS:Next Generation Sequencing)」法である。最初のNGS製品は2005年に開発され、その後は継続した改良の積み重ねによって性能は飛躍的に高まり、解析コストは急速に低下した。

 次世代シーケンス装置の大手メーカーであるillumina(イルミナ)の資料「NGS超入門」によると、次世代シーケンス技術が登場する以前に国際プロジェクトとして実施されたヒトの総遺伝子解読プロジェクト「ヒトゲノム計画」(1990〜2003年)では、30億米ドルもの膨大なコストがヒトゲノム(総塩基数が約30億、遺伝子数が約2万6000)の解読に費やされた。このプロジェクトはヒトゲノムの解読コスト削減に大きく寄与し、2006年にはヒトゲノム(個人のゲノム)の解読コストは2000万米ドルと大幅に低下した。

 そして次世代シークエンス技術による解析装置(次世代シーケンサー)の登場により、翌年の2007年には解読コストは200万米ドルとさらに大幅に削減された。次世代シーケンス技術の継続的な改良によって2014年にはヒトゲノムの解読コストはわずか1000米ドルにまで低下したとする。次世代シーケンス技術が遺伝子解析のコスト低減と応用範囲の拡大にとてつもなく大きな貢献を成したことがうかがえる。

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