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感染症の解析に貢献するPCR検査と遺伝子検査、迅速検査(前編)福田昭のデバイス通信(387) 2022年度版実装技術ロードマップ(11)(1/2 ページ)

今回と次回は、JEITAの「2022年度版 実装ロードマップ」から、「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)の概要をご紹介する。

» 2023年02月15日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

感染症と非感染症、ウイルス性感染症と細菌性感染症

 電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。

 本シリーズの第6回から、第2章「注目される市場と電子機器群」の第3節(2.3)「ヒューマンサイエンス」より第2項(2.3.2)「メディカル」の概要を報告してきた。「メディカル」は4つの項目、すなわち「手術支援ロボット」(2.3.2.1)、「マイクロ流体デバイス」(2.3.2.2)、「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)、「バイオセンサ」(2.3.2.4)で構成される。

 前回は、「マイクロ流体デバイス」(2.3.2.2)の概要を報告した。今回と次回は、「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)の概要をご紹介する。

「2022年度版 実装ロードマップ」第2章「注目される市場と電子機器群」の第3節(2.3)「ヒューマンサイエンス」 「2022年度版 実装ロードマップ」第2章「注目される市場と電子機器群」の第3節(2.3)「ヒューマンサイエンス」[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

 「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)は、以下の3つの項目で構成される。「1.感染症と非感染症に対する事業背景の違い」「2.ウイルス性感染症とPCR検査、遺伝子検査」「3.細菌性感染症と薬剤耐性、迅速検査の需要」である。

第2章第3節第2項(2.3.2)「メディカル」の目次 第2章第3節第2項(2.3.2)「メディカル」の目次。「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)の目次は筆者がロードマップ本体から作製したもの[クリックで拡大]

COVID-19の流行を契機に感染症の研究が急激に拡大

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界的に流行する以前は、感染症に関する研究論文の数は、非感染症に比べるとごくわずかにとどまっていた。その理由はいくつかある。

 まず、国民1人当たりの所得が高い国(先進国と準ずる国)では、感染症による死者の割合が少ないこと。先進国では死因の上位は悪性新生物(がん)、心疾患、脳卒中、認知症などが占めており、いずれも感染症ではない。逆に国民1人当たりの所得が低い国(発展途上国)では下気道感染症(いわゆる肺炎や気管支炎)を始めとする感染症による死者は多いものの、研究のリソース(資金や人員など)が不足している。

 感染症はいったん世界的な大流行が発生すると医療リソースに対する膨大な需要が生じるものの、平常時の需要はほとんどなく、事業としては成立しづらい。さらに感染症は研究開発現場における厳重な感染対策が必須であることから、非感染症に比べて研究開発の初期投資と維持コストが高くなってしまう。

 このような状況からCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界的に流行したことで、感染症に関する研究リソースはかなりの拡大を見せた。例えばコロナウイルス(SARS/MERS/COVID)に関する研究論文は2010年代前半には数百件/年だったのが、2020年〜2021年には数万件/年と激増した(参考記事:「「ヒューマンサイエンス」とは何か」)。

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