100GHz帯域の超小型増幅器ICモジュールを開発:IOWNでの超高速光通信も視野に
NTTは、100GHzの超広帯域性能を担保しながら、従来に比べ体積を10分の1以下に抑えた「ベースバンド増幅器ICモジュール」を開発した。実験・計測器への応用に向けて早期実用化を目指すとともに、次世代の情報通信基盤「IOWN」における超高速光送受信器への適用を検討していく。
NTTは2023年2月、100GHzの超広帯域性能を維持しながら、従来に比べ体積を10分の1以下に抑えた「ベースバンド増幅器ICモジュール」を開発したと発表した。実験・計測器への応用に向けて早期実用化を目指すとともに、次世代の情報通信基盤「IOWN」における超高速光送受信器への適用を検討していく。
NTTはこれまで、1mm同軸コネクター付き超広帯域ベースバンド増幅器ICモジュールのプロトタイプを開発し、毎秒2テラビット超という光伝送の実証実験を行ってきた。ただ、試作したICモジュールの体積はほぼ1万mm3と大きく、周辺デバイスと接続するには外付けのDCブロック部品が必要になるなど、実用化に向けて課題もあったという。
NTTは今回、独自のインジウム・リン系ヘテロ結合バイポーラトランジスタ(InP HBT)技術を用い、超広帯域ベースバンド増幅器ICのさらなる高性能化を図ることで、幅広いピーキング特性を実現した。この特性によって、パッケージ実装で生じる高周波信号の損失を補償し、増幅器ICモジュールとして利得の平たん性を担保することが可能になったという。
従来技術と今回開発した技術の比較 出所:NTT
InP HBT技術を用いたベースバンド増幅器ICの外観と周波数特性[クリックで拡大] 出所:NTT
パッケージ実装技術も工夫した。インタフェースにプッシュオン嵌合型の同軸コネクターを採用した。同軸と高周波基板を接合する部分の設計を工夫することで、超広帯域特性を維持しつつ、ICモジュールの外形寸法は11.8×10×4.3mmにするなど、小型形状を実現した。また、小型の薄層キャパシターを内部の高周波基板上に実装することで、DCブロック機能をモジュール内に取り込んだ。
開発したベースバンド増幅器ICモジュールは、従来に比べ体積を10分の1以下とし、「100GHz以上の超広帯域特性」と「DCブロック機能の集積」を両立させた。しかも、シンボルレートが112Gボーの超広帯域PAM-4信号を、ひずみなく増幅できることも実証した。
ベースバンド増幅器ICモジュールの構成ブロック図と外観および、周波数特性[クリックで拡大] 出所:NTT
開発した増幅器ICモジュールを用い、112GボーのPAM-4信号を増幅した実験結果 出所:NTT
- 5Gマルチセクターアンテナ屋内基地局装置を開発
横浜国立大学とNTTドコモ、日本電業工作および富士通は、マルチセクターアンテナを実装した5Gマルチセクターアンテナ屋内基地局装置を共同開発し、28GHz帯の電波を用いた通信の実証実験に成功した。従来装置に比べ回路規模を約10分の1に小型化している。
- ローカル5Gと通信品質制御で遠隔カフェ接客の操作感を向上
NTTは2023年1月17日、同社が開発した通信品質制御技術とNTT東日本が提供するローカル5Gを組み合わせることで、遠隔地の操作者が通信遅延によるタイムラグを感じない自然な遠隔ロボット操作を実現したと発表した。
- 高精度な量子センシングをハードを改善せずに実現
NTTと産業技術総合研究所(以下、産総研)、大阪大学量子情報・量子生命研究センター(以下、阪大)は2022年12月16日、ハードウェアを改善せずに、より高精度な量子センシングを実現できるアルゴリズムを考案したと発表した。
- IOWNで、120kmの遠隔でも”普段通り”の手術を実現
NTTは2022年11月15日、遠隔手術の実現に向け、国産の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」(以下、hinotori)を提供するメディカロイドと共同実証を開始したと発表した。NTTの「IOWN オールフォトニクス・ネットワーク」(以下、APN)と接続し、低遅延でゆらぎの少ない通信を活用することで、医師不足が深刻化する地方でも専門医の手術を受けられる環境作りを目指す。実証環境は2022年11月16〜18日に開催される「NTT R&D フォーラム ―Road to IOWN 2022」で展示された。
- NTT、2023年3月に「IOWN」サービスを提供開始
NTTは2022年11月14日、同社がグループ全体で取り組む「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)」サービスを2023年3月から提供開始すると発表した。
- 2nm世代の国産化へ、国内8社出資の製造会社Rapidus始動
経済産業省は2022年11月11日、2nmプロセス以下の次世代半導体の製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトの採択先を、ソニーグループやキオクシアなど国内8社の出資で設立した半導体製造企業Rapidus(ラピダス)に決定したと発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.