ドイツの組み込みAIスタートアップAITADが、組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(ドイツ・ニュルンベルク)において、組み込みAIによって低コストかつプライバシーに配慮したシャワー監視ソリューションを実現する、無線赤外線センサーモジュールを展示した。
ドイツの組み込みAI(人工知能)スタートアップAITADはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)において、組み込みAIによって低コストかつプライバシーに配慮したシャワー監視ソリューションを実現する、無線赤外線センサーモジュールを展示した。同モジュールは、組み込みシステムにおける革新的な製品を表彰する「embedded award」のAI部門で受賞した。
AITADは2018年に設立したドイツ・オッフェンブルクに本拠を置くスタートアップ企業で、組み込みAIシステムの開発およびテスト、特に産業分野におけるML(機械学習)関連の開発(主にシステムコンポーネント)を手掛ける。
同社は、従業員30人程度という規模ながら、企業の開発パートナーとして、データ収集からシステムコンポーネントの開発/納品までの全プロセスを請け負っているという。AITADのCEO(最高経営責任者)、Viacheslav Gromov氏は、「われわれは、フルスタックの組み込みAIソリューションプロバイダーだ。データサイエンティスト、メカニカルエンジニア、組み込みソフトウェアエンジニア、組み込みハードウェアエンジニアがそろっている。顧客の要望に応じ、データを収集し、AIを構築、ボードを作り、そこにAIを搭載する。全てのソリューションが提供できる」と説明していた。
今回、同社はパートナーであるSilicon Laboratories(以下、Silicon Labs)のブース内に出展。家庭や公共施設のシャワーにおいて使用者の動きなどに応じた制御をすることで節水や快適性、安全性につなげるソリューションとして、Silicon LabsのArm Cortex-M33コア搭載マルチプロトコルワイヤレスSoC(System on Chip)「EFR32MG24」に組み込みAIを搭載した、シャワー監視無線赤外線センサーモジュールを展示していた。
同ソリューションは、センサーからのデータストリームの入力からデータの前処理、機械学習モデル、結果のスコアリングと評価、無線送信までの全ての処理がモジュール上で数ミリ秒のリアルタイムで動作。EFR32MG24のAI/MLアクセラレーションユニットへの独自の変換アルゴリズムを備えたAITADの組み込みAIプロセスによって実現したとしている。また、AIモデルは、センサーの解像度やユースケースに応じてスケーラブルに対応可能だ。
モジュールは、LINなどのデータバスで直接接続するか、EFR32MG24の2.4GHz RFユニットによる無線で通信可能。ZigBee、Matterなど、チップアンテナ内蔵の2.4GHzワイヤレスソリューションを用い、壁や天井、建具にバッテリー駆動で遠隔設置できる。また、カメラを用いず、低解像度(8×8や16×16から、3桁のピクセル数まで拡張可能)の赤外線アレイセンサーを使用することで、シャワールームでのプライバシー保護も可能にしている。
こうしたスマートホーム分野の他、同社は産業および自動車市場も主要ターゲット市場としている。Gromov氏は、「仮にエッジAIを用いたソリューションの場合、データストリーミングのために大型のチップが必要となり、またサーバ代もかかってくる。当社の組み込みAIソリューションは、AI搭載のボード全体が10米ドルほどと非常に低コストで実現可能だ」と強調していた。
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