2022年第4四半期から2023年第1四半期に発売された最新プロセッサのうち、スマートフォン向けチップや、復刻版ゲーム機などに搭載されているチップを比較してみたい。
2022年第4四半期から2023年第1四半期にかけて、多くの新プロセッサが発売された。テカナリエは、それらのプロセッサのうち、市販されているほとんどを入手し、開封/解析を行っている。カスタム依頼で極めて入手困難なものも解析することもあるが、十分なビジネス規模を持っているチップの横並び比較を行うことが多い。2023年は、ウワサ通り3nm世代のプロセスを適用した製品がデビューすると思われるが、実物を見てから報告する予定だ。2023年5月現在の最先端の製造テクノロジーは4nmである。多くの4nmプロセッサがスマートフォンやPC系分野に活用されている。
表1は、2022年末にスマートフォンで採用が始まったMediaTekの新プロセッサ「Dimensity 9200」(プラットフォームの名称。プロセッサの型名は「MT6985」)とQualcommの「Snapdragon 8 Gen 2」(プロセッサの型名は「SM8550」)の比較である。
ともにPOP(Package On Package)を採用しており、プロセッサパッケージの上に別パッケージでLPDDR5が積層されている。ハイエンドのスマートフォンプロセッサでは、LPDDR5の容量は12GBモデル。やや低価格の品種として8GBモデルが存在する。同じプロセッサをベースにして、積載メモリで仕様分けができるPOPは、複数のモデルを用意するには有効な手段となっている。
4nm世代品でも、スマートフォン向けプラットフォームの多くはPOPを使っている。MediaTekのDimensity 9200、QualcommのSnapdragon 8 Gen 2は両方とも、TSMCの4nmプロセスノードで製造されている。ただし、MediaTekは「N4P」と呼ばれるハイパフォーマンス向けの製造プロセスだが、Qualcommは第1世代の4nm(2022年のSnapdragon 8+ Gen 1と同じ)「N4」のまま、Snapdragon 8 Gen 2を作り上げている。
2つのプロセッサの面積はほぼ同じで、導入IP(Intellectual Property)、自前IPなど各社それぞれの違いはあるが、機能もほぼ同じものになっている。高性能な製造を用いるMediaTekよりもQualcommの方が周波数やモデム通信速度は高い。SoC(System on Chip)プロセッサの多くの機能は高速ではない。ディスプレイ表示部、VideoやAudio系など多くの周辺機能はCPUに比べると低速だ。高速で動作するハイパフォーマンスCPUは、チップ面積のせいぜい数パーセント程度である。高速のCPU部のみ、やや大きめの部品(具体的はFinFET数の多いセルや高速SRAM)を用い、速度を上げることができるので、周波数の低い大部分は、N4Pを適用すると性能が過剰になってしまう可能性があるのだ。また、前製品の設計資産をそのまま活用できるので、QualcommはN4を再利用したものと思われる。さらに、Snapdragon 8 Gen 2には特筆すべき特長が備わっている。CPU構成が4階層になっているのだ。
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