大阪大学は、脳波計測に用いるセンシング回路の消費電力を、従来に比べ7割削減できる技術を開発した。この技術を応用し、体温を利用して生成できるわずかな電力だけで、収集した脳波データを無線伝送できることを実証した。
大阪大学大学院工学研究科の兼本大輔准教授らによる研究グループは2023年5月、脳波計測に用いるセンシング回路の消費電力を、従来に比べ7割削減できる技術を開発したと発表した。この技術を応用し、体温を利用して生成できるわずかな電力だけで、収集した脳波データを無線伝送できることを実証した。
開発した技術は、独自の信号圧縮手法と専用回路システムを利用して実現した。できるだけ少ない脳波信号を用い、全体の信号を復元できる「圧縮センシング理論」をベースとしている。これにより、「ランダムに信号を絞りながら取得することで、計算量と情報量を大幅に削減でき」、「少ない情報から高い精度で元の信号を復元できる」という。
今回開発した技術を脳波の無線伝送に応用した。実験では、高い信号精度を保ちつつ、消費電力をチャネル当たり97μWに抑えた。これにより、大幅な省エネ化を達成した。研究グループは、小型熱電発電素子を組み合わせて、センサーを試作した。これを用い、体温と外気温の差で生成される微弱な電力だけで、取得した高品質の脳波データを無線伝送できることを実証した。
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