理化学研究所(理研)は、エピタキシャル接合により作製した「半導体コロイド量子ドットの超格子薄膜」が、従来の1000〜100万倍という高い移動度になることを確認した。作製した薄膜はキャリアドープにより、金属的伝導性を示すことも明らかにした。
理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発デバイス研究チームの岩佐義宏チームリーダーとサトリア・ビスリ上級研究員(現在は客員研究員、東京農工大学大学院工学研究院准教授)らによる共同研究グループは2023年5月、エピタキシャル接合により作製した「半導体コロイド量子ドットの超格子薄膜」が、従来の1000〜100万倍という高い移動度になることを確認した。作製した薄膜はキャリアドープにより、金属的伝導性を示すことも明らかにした。
半導体のコロイド量子ドット(CQD)は、有機配位子によって安定化されたナノメートルサイズの結晶である。優れた発光と吸収特性を有し、量子ドットのサイズを変更すれば波長(色)を調整でき、色純度も高いという。溶液プロセスが可能といった特長もある。ただ、電子デバイスへ応用するには、移動度の低さが課題となっていた。
研究グループは今回、硫化鉛(PbS)CQDに着目した。このCQDを有機溶媒表面上に集積し、その上で特定の結晶面から有機配位子を取り除き、CQD同士を接合させた。こうした方法で、量子ドット超格子薄膜を形成し、これをシリコン基板上に転写した。
このプロセスで重要となるのが、CQDを「多面体」として扱うことだという。これにより、向かい合った面同士をエピタキシャル接合させ、広い面積に配列した超格子構造を作り出すことに成功した。電子顕微鏡やX線結晶構造解析によって、その構造を確認した。
続いて、電界効果トランジスタを用いCQD超格子薄膜の電気伝導特性を調べた。トランジスタの出力特性から、移動度は13.5cm2/V・sであることが分かった。この値は、商用CQDデバイス、量子ドットディスプレイの移動度に比べ100万倍以上、量子ドット太陽電池と比較すれば1000倍以上に相当するという。
さらに、ゲート電圧の値を変えて、CQDトランジスタにおける電気抵抗の温度依存性を確認した。この結果、ゲート電圧が低いと絶縁体的な振る舞いとなった。一方、ゲート電圧を高くしてキャリア密度を上昇させると(キャリアドープ)、電気抵抗が劇的に低下し、温度に依存しない金属的伝導性を示した。こうした現象は、従来のCQD集合体では見られなかったという。
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