理化学研究所(理研)は、従来の100倍以上となるギガワット(GW)級のピーク出力を可能にした「アト秒レーザー」を開発した。光シンセサイザーの電場を変化させることで、発生するアト秒レーザーのパルス波形を制御することにも成功した。
理化学研究所(理研)は2022年3月、従来の100倍以上となるギガワット(GW)級のピーク出力を可能にした「アト秒レーザー」を開発したと発表した。光シンセサイザーの電場を変化させることで、発生するアト秒レーザーのパルス波形を制御することにも成功した。
理研は、ナノ加工やイメージングなどの用途に対しても、アト秒(10-18秒)という極めて短い時間に光るレーザーが応用できるよう、「光シンセサイザー光源」による高出力化に取り組んできた。その成果としてこれまで、光シンセサイザーを実現するための基本技術「電場制御法」や、ピーク出力が2.6テラワット(TW)の高強度光シンセサイザーを開発してきた。
今回は、波長の異なる3色のフェムト秒レーザーパルスを時空間で精密に合成して発生した「光シンセサイザー」と、理研独自の「高次高調波エネルギースケーリング法」を組み合わせた。発生条件の最適化などにより、パルス幅が226アト秒、パルスエネルギーは最大0.24μJ、ピーク出力は1.1GWという高強度アト秒レーザーの開発に成功した。従来のアト秒レーザー光源と比べ、出力は100倍以上だという。
左はアト秒ストリーク法により評価されたパルス波形(赤線)と時間位相(青点線)、右は計算から再構築したスペクトル波形(赤実線)とスペクトル位相(青点線)および、実験により得られたスペクトル波形(黒点線)[クリックで拡大] 出所:理研研究チームは、アト秒レーザーの高機能化に向けて、発生するアト秒パルスの時間幅を変えるための手法も開発した。実験では、光シンセサイザーの電場波形を精密に制御することにより、アト秒レーザーのパルス幅が240アト秒から272アト秒に変化することを確認した。
左は高調波スペクトルの光シンセサイザー電場への依存性。右は特定の光シンセサイザー条件AとBで発生した高調波スペクトル。ここでは3色のレーザーパルスのうちアイドラー光と呼ばれる2.1μm光パルスの遅延時間を操作した[クリックで拡大] 出所:理研さらに、特定の光シンセサイザー条件で発生させるAとBの高調波スペクトル波形を、数時間にわたって交互に発生させ、アト秒ストリーク法による測定を行った。この結果、3アト秒以下のパルス幅変化でアト秒レーザーのパルス波形を再現することに成功。開発した高強度光シンセサイザーは、極めて高い発生電場再現性を有していることが分かった。
今回の研究成果は、理研光量子工学研究センター超高速コヒーレント軟X線光学研究チームの高橋栄治チームリーダー(開拓研究本部高橋極限レーザー科学研究室主任研究員)や、アト秒科学研究チームのビン・シュエ基礎科学特別研究員らによるものである。
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