理化学研究所(理研)は、シリコン量子ドットデバイス中の電子スピンを用いて、3量子ビット量子誤り訂正を実証した。シリコン半導体を用いた量子コンピュータを実現するための基本技術として注目される。
理化学研究所(理研)の研究チームは2022年8月、シリコン量子ドットデバイス中の電子スピンを用いて、3量子ビット量子誤り訂正を実証したと発表した。シリコン半導体を用いた量子コンピュータを実現するための基本技術として注目される。
量子コンピュータは、不純物や熱などによる雑音の影響を受け、量子情報に誤りが生じることがあるという。このため、実用レベルで量子計算を行うには、誤りを訂正する回路(量子誤り訂正)を実装する必要がある。これを実現するには、最低でも3つの量子ビットが必要になるという。2量子ビットによる量子ゲートは既にあるが、3つ以上の量子ビットを高い精度で制御するのは、極めて難しかったという。
研究チームは今回、シリコン量子ドットデバイス中の電子スピンを用いた量子ビットデバイスを作製し、3つの量子ビットによる量子誤り訂正を実現した。具体的にはシリコン/シリコンゲルマニウム半導体基板上に微細加工を行い、量子ドット構造を作製した。ゲート電極に印加する電圧を制御すれば、高い自由度で量子ドットを形成し、その電子スピンの状態を制御できるという。
研究チームはこれまで、2量子ビットまでの量子ゲートを実現してきた。今回の研究では、これに加え3量子ビットゲートの「Toffoliゲート」を実現した。Toffoliゲートは2つの補助量子ビットが両方とも「0」状態の時にだけ、対象となる量子ビット(データ量子ビット)の状態を反転させることができる。量子誤り訂正では、検出した誤りに基づき、データ量子ビットの状態を訂正することができるという。
量子誤り訂正の実験では、このToffoliゲートを用いて、3量子ビットの位相誤り訂正回路を実現し、シリコン量子ビット試料に実装した。この試料を用いて、量子誤りの検出と、初期状態への復元が可能なことを確認した。
今回の成果は、理研創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループの武田健太研究員、野入亮人基礎科学特別研究員、樽茶清悟グループディレクター(量子コンピュータ研究センター半導体量子情報デバイス研究チームチームリーダー)らの研究グループによるものである。
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