今回は、インターネットと並ぶ情報通信の基幹技術「移動体通信システム」の動向を取り上げる。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
前回からは第2章第4節(2.4)「情報通信」の紹介を始めた。前回では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行(パンデミック)を契機にインターネットのトラフィックが大幅に増加したことと、流行が収束しつつある現在でもトラフィックの増加が継続していることを述べた。今回は、インターネットと並ぶ情報通信の基幹技術「移動体通信システム」の動向を簡単に述べる。
過去、日本の移動体通信システムは約10年ごとに新しい世代の商用化を繰り返してきた。1980年代の第1世代「1G」(アナログ方式、音声伝送のみ、主な用途は自動車電話)、1990年代の第2世代「2G」(デジタル方式、音声とデータ(パケット)を伝送、主な用途は個人が持ち運べる小型軽量な端末)、2000年代の第3世代「3G」(世界共通のデジタル方式、音声とデータを伝送)へと進化した。
移動体通信端末(携帯電話端末)の機能向上が激しくなったのは第3世代(3G)の2000年代だろう。内蔵カメラ(静止画撮影)、インターネット接続、電子メール、海外ローミング、高速データ通信などの機能が加わった。
2010年代に普及した第4世代(4G)では携帯電話端末が「音声通話機能とデータ通信機能を備えた超小型コンピュータ」、すなわち「スマートフォン」へと変革を遂げた。通信機能の主役が音声からデータへと移行し、ユーザーが主に利用するのは「アプリ」(アプリケーション・ソフトウェア)に変化した。インターネット接続の通信速度はダウンロード(下り)で最大1Gビット/秒となり、固定ブロードバンドに追い付いた。
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