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5G 人からモノへ 〜「未踏の時代」迎えた無線技術 特集

6G向けサブテラヘルツ帯フェーズドアレイ無線機IC半二重通信では112Gbpsを達成

東京工業大学は、6G(第6世代移動通信)に向けて、サブテラヘルツ帯で全二重通信を可能とする「フェーズドアレイ無線機IC」を開発した。モバイル端末やIoT機器などへの搭載を視野に入れている。

» 2023年06月13日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

新たなアンテナ構成などにより、全二重通信を可能に

 東京工業大学工学院電気電子系の岡田健一教授らによる研究チームは2023年6月、6G(第6世代移動通信)に向けて、サブテラヘルツ帯で全二重通信を可能とする「フェーズドアレイ無線機IC」を開発した。モバイル端末やIoT機器などへの搭載を視野に入れている。

 6Gシステムでは周波数帯として、より広帯域が確保できるサブテラヘルツ帯の利用が計画されている。高速かつ大容量通信に加え、低遅延や多数同時接続といった通信を実現するためである。ただ、高い周波数帯を利用する無線機では、高周波信号の自己干渉が課題となり、これまで全二重通信が極めて難しかったという。

 そこで研究チームは、高周波信号の自己干渉を抑制するためのアンテナ構成と、自己干渉をキャンセルするための広帯域高精細移相器を新たに開発した。アンテナ構成は、水平と垂直の両偏波に対応するパッチアンテナを、極めて対称性の高い差動回路によって励振をするもので、不整合による自己干渉を大きく低減できるという。

 また、可変利得増幅器とスイッチ型移相器で構成される「自己干渉キャンセル回路」を新たに開発した。これにより、「50dBの可変利得」と「0.42度分解能」「360度の位相可変」を可能とし、アンテナからの自己干渉をキャンセルすることが可能となった。さらに、無線機にダイレクトコンバージョン方式を採用したことで、LOリークの少ないミキサー構成が可能となり、88G〜136GHzの広帯域増幅器を実現した。

 研究チームは今回、最小配線半ピッチ65nmのシリコンCMOSプロセスを用い、開発したフェーズドアレイ無線機ICを作製した。このICを二重偏波アンテナ搭載のプリント基板に実装し、実験室内でOTA測定を行った。この結果、サブテラヘルツ帯での全二重通信動作を確認。8PSK変調で6Gビット/秒(bps)、16QAM変調時は4Gbpsの全二重通信を実現した。自己干渉抑制回路によって、最大20dBcの抑圧比改善ができていることも分かった。

サブテラヘルツ帯フェーズドアレイ無線機のチップ写真 出所:東京工業大学 サブテラヘルツ帯フェーズドアレイ無線機のチップ写真 出所:東京工業大学
サブテラヘルツ帯フェーズドアレイ無線機の写真 出所:東京工業大学 サブテラヘルツ帯フェーズドアレイ無線機の写真 出所:東京工業大学

 なお、開発したフェーズドアレイ無線機ICによるサブテラヘルツ帯の半二重通信では、これまでの最高となる112Gbpsの通信速度を達成したという。

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