各国ではリサイクルの取り組みが進むが、電子廃棄物の増加は依然として深刻な問題だ。この問題の改善に向けて期待できるのが、セカンダリーマーケット(中古市場)の活用だ。
多くの国で電子廃棄物に対する意識が高まり、リサイクルの取り組みが実施されているにもかかわらず、電子廃棄物の問題は依然として続いている。国連が発表した報告書「Global E-waste Monitor 2020」によると、2019年に世界中で発生した5360万トンの電子廃棄物のうち、リサイクルされたのはわずか17.4%だったという。
電子廃棄物の削減に向けて規制を変更するには、承認までに数年とはいかないまでも数カ月かかる可能性がある。しかし、解決策は規制の変更だけではない。企業は、セカンダリーマーケット(中古市場)を活用して、電子廃棄物の問題改善に貢献できる。
電子廃棄物がリサイクルされる割合はごくわずかである状況においては、循環型経済(サーキュラーエコノミー)が、電子廃棄物が環境と健康に与える影響を軽減する上で極めて重要な役割を果たす可能性がある。
企業や大手ワイヤレス小売業者は、余剰在庫や下取り在庫(特に電子機器やモバイル機器)を、リサイクルや再販、改修が可能な事業者に売却できる。「R2(Responsible Recycling)認証」を取得した再販業者や改修業者は、携帯電話内部にある金や銀などの貴金属を適切にリサイクルおよび抽出する資格を有しているため、これらの金属の新たな採掘を減らすことができる。
電子製品は、過剰生産や不人気、未使用のまま返品された、人気があって下取りに出されたなど、どんな理由であっても他の種類の商品と比べ、時代遅れになるのが特に速い。「リコマース」によって、中古または再生品の電子機器が、割安なモデルや旧モデルを探している最終消費者の手に渡る可能性がある。こうした事業によって、まだ価値のある製品を埋立地で廃棄せずに、資源を節約し、新製品の製造に伴う温室効果ガス排出を削減することができる。
在庫削減の責任者にとって、過剰な電子機器在庫は、修理費や保管費、輸送費、人件費などの諸経費がかかることから、課題となり得る。これらの問題と、変化の激しい業界での顧客からの返品の増加が相まって、企業はかなりの問題を抱えている。
幸いなことに、企業が社内ソリューションでは有効に清算できない可能性のある商品に対しても需要はある。現在、業務効率を最大化し、廃棄費用と物流コストを節約しながら、売れ残った在庫を現金に変える真の機会が到来している。
企業は、データに裏打ちされた意思決定によって、製品の価値を最大限に回復させることができる。例えば、オンラインオークションを手掛けるB-Stockのネットワーク全体のデータによると、PCやタブレットは小ロットでまとめた方が、回収率が高い傾向にある。
この洞察は、優れた在庫削減プラットフォームが提供できることのほんの始まりにしかすぎない。小売業や製造業者は、幅広いバイヤーネットワークを備えた完全管理型の資産回復ソリューションを利用することで、従来の方法では対応不可能な量の余剰品を、持続的に販売可能になる。
これまでリサイクル関連の取り組みによって、電子廃棄物の削減に関してある程度の効果がもたらされたことは事実だが、問題の根本的な原因についてはうまく対処できているわけではない。
その主な理由の一つとして挙げられるのが、電子廃棄物を適切に収集、輸送、処理するためのインフラや規則が不十分であるという点だ。リサイクルプログラムが策定されている国でも、全ての電子廃棄物が適切に収集/廃棄されているわけではない。その多くは最終的に、発展途上国に輸出され、そこで環境破壊につながるような危険な方法で処理されているのだ。例えば、化学物質が溶出するなどの問題がある。
さらにメーカーの中には、ほんの数年間しか使えない製品を作る場合がある。このような慣行は、一貫性のある有益なユーザーエクスペリエンスを生み出すことを目的としているが、その結果として、電子廃棄物が絶え間なく発生してしまうことになる。
また、消費者行動が担う役割についても注目すべきだ。2022年に廃棄された携帯電話機の数は、53億台に上る。多くの人々が、電子廃棄物を再利用することの重要性を認識しておらず、電子機器の適切な廃棄方法を知らない可能性もある。また、責任を持って処分することよりも利便性を優先する人がいるため、電子廃棄物がリサイクルに回されずにごみとして捨てられることになる。
企業は、中古市場を活用することにより、中古品や余剰の電子機器をより持続可能な方法で販売し、過剰在庫に対する圧力を緩和できる。このようなチャンスにより、企業が製品に対する価値回復の速度を上げられる。それだけでなく、余剰製品/材料が確実に消費者の手に渡り、廃棄物の削減にもつながる。循環型経済は、企業や消費者、そして地球にとって、相互に利益をもたらすのだ。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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