OKIは、長距離の海中間における通信速度がこれまでより1.6倍も速い水中音響技術を開発し、実証実験に成功した。この技術を応用すると、海洋資源調査などで、広範囲に一斉探査を行うことが可能となる。
OKIは2023年6月、長距離の海中間における通信速度がこれまでより1.6倍も速い水中音響技術を開発し、実証実験に成功したと発表した。この技術を応用すると、海洋資源調査などで、広範囲に一斉探査を行うことが可能となる。
海洋における資源探索や水中構造物の点検などを行う場合、近年は複数の水中IoT機器を用いて、作業効率を高めようとする動きがある。ここで機器間の通信手段として用いられているのが音波を利用した「水中音響通信」である。ただこれまでは、利用可能な周波数帯域が狭く、伝送できる情報量が限られていた。また、ドップラー効果やマルチパスなどの影響により、通信のリアルタイム性や安定性にも課題があったという。
OKIは、2020年11月に洋上母船とIoT機器間での映像伝送通信に成功した。この時は、海面と海底方向の鉛直方向に通信を行った。今回はこの技術を水平方向の通信に拡張した。特に、水平方向への通信ではマルチパスやドップラー効果の影響が大きくなるため、その対策を強化した。
従来は海中2km間の通信速度が20kbps(ビット/秒)だったが、今回は32kbpsと、1.6倍に高速化した。これによって、送信できる情報量を増やした。また、送受信器は長さを1m以下とし、水中IoT機器への取り付けを可能にした。
OKIはグループ会社であるOKIコムエコーズの協力を得て、2023年3月に駿河湾海中の海域で実証実験を行った。実験では、約2km離れた2隻の試験船から通信用の送受信器「OST2120」をそれぞれ、海面から約15m下の海中につり下げた。この状態でデータ通信を行い、32kbpsで安定した通信が行えることを確認した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.