「Taycan」のインバーターは、モーター側面の上に搭載してある。入力側は800Vという極めて高いバッテリー出力電圧(通常の電気自動車用バッテリーの出力は300V〜400V)を扱うため、絶縁耐圧の高い構造を備える。インバーターの厚みは約100mmと、絶縁耐圧を考慮するとかなり薄い。入力フィルター用コンデンサーと平滑コンデンサーには汎用部品を選択しており、複数のコンデンサーを並列接続する。放熱には水冷を採用しており、入力フィルター、パワーモジュール(1相当たり2並列×3)、平滑コンデンサー(一部)の順に冷却水が流れる。なお800Vと高い電圧を仕様に決めたのは、充電時間の短縮が目的である。
「i-Pace」のインバーターは、モーター側面の上に搭載する。厚みは83mmとかなり薄い。平滑コンデンサーに中国製のカスタム品を採用してコンデンサーを小さくしている。またコンデンサーは水冷される。電気系のレイアウトはU字状に曲がって配置されており、かなり複雑だ。「Taycan」と「Model 3」のインバーターは電気系が直流入力コネクターから交流出力コネクターまで直線状にレイアウトしてあるのと、対照的である。
「Model 3」のインバーターは、モーターの回転軸に対して垂直方向に搭載してある。モーター、減速機、インバーターを一体化した機電一体モジュールにすることで、筐体を小さく軽くした。パワーモジュールにはSiCデバイスを採用した。車載用インバーターにSiCデバイスを採用するのは、これが初めてだとみられる。パワーモジュールには2枚のSiCチップを搭載した。
インバーターのパワーモジュール外観とその特徴。左は「Model 3」、右上は「i-Pace」、右下は「Taycan」のパワーモジュール[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)なお、これらのインバーターの分解写真と詳しい分析結果をロードマップ本体に掲載している。ご興味のある向きは参照されたい。
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