今回は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)に不可欠の電子ユニットである「インバーター」について解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回よりシリーズで紹介してきた。
本シリーズの第30回からは、第2章第5節(2.5)「モビリティー」の概要をご説明している。第2章第5節(2.5)「モビリティー」は、第1項(2.5.1)「はじめに」、第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」、第3項(2.5.3)「電動化技術」、第4項(2.5.4)「EMC・ノイズ対策」、第5項(2.5.5)「日本のモビリティー産業界への提言」で構成される。前回は、第3項(2.5.3)「電動化技術」から「2.5.3.2 機電一体化」の概要を述べた。
今回は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)に不可欠の電子ユニットである「インバーター」を扱う。ロードマップでは「2.5.3.3 インバータ構造の進化」に相当する。バッテリー(二次電池)は、直流の高電圧を出力する。車両を駆動するモーターは直流モーターではなく、通常は交流モーター(同期モーターあるいは誘導モーター)である。このため、バッテリーの直流出力を適切な周波数の交流に変換するインバーターが必要となる。
「実装技術ロードマップ」では、高級乗用車タイプのBEVを3つ選び、インバーターを分解して解析した結果を掲載した。選んだのはポルシェの「Taycan」、ジャガーの「i-Pace」、テスラの「Model 3」である。ポルシェとジャガーは高級スポーツカーと高級SUVの老舗ブランド(いずれもガソリン車)、テスラは電気自動車(BEV)のベンチャー企業Teslaが開発したブランドとして知られる。
ポルシェの「Taycan」とジャガーの「i-Pace」は、両方のブランドで初めての電気自動車(BEV)であり、価格は1000万円を超える。テスラの「Model 3」は同ブランドでは商業的に最も成功した車種である。価格は500万円前後と、BEVとしてはかなり安い。
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