今回から、「6G」を実現するために必要な要素技術を解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
前々回からは第2章第4節(2.4)「情報通信」の紹介を始めた。前々回では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行(パンデミック)を契機にインターネットのトラフィックが大幅に増加したことと、流行が収束しつつある現在でもトラフィックの増加が継続していることを述べた。
前回は、インターネットと並ぶ情報通信の基幹技術「移動体通信システム」の動向を報告した。日本の移動体通信システムは約10年ごとに新しい世代の商用化を繰り返してきたこと、最近になってサービスが始まった第5世代(5G)では、過去の技術開発の主体であった高速化と大容量化に加えて「低遅延」と「多数同時接続」の2つが新しい特徴として加わったこと、次世代(第6世代(6G))の移動体通信システムは、2030年代の商用化を目標として開発が進められていること、などである。
第6世代(6G)の移動体通信システムは、5Gの特長である「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」をさらに強化する。それぞれ10倍、10分の1、10倍を目指す。さらに、「低消費電力」「自立性」「拡張性」「安全性・信頼性」といった機能を追加する。
2030年の商用化を目標時期とすると、おおよそ2025年までには要素技術を開発しておく必要がある。開発すべき要素技術には無線通信技術だけでなく、社会インフラを進化させる技術も含まれてくる。
今回から、特に重要と考えられる要素技術のいくつかを、簡単に説明していく。具体的には(a)「テラヘルツ波」技術、(b)「仮想化端末」技術、(c)「ユーザーセントリックアーキテクチャ」、(d)「メタサーフェス反射板」、(e)「通信衛星」、(f)「アナログRoF(Radio-over-Fiber)」技術がある。
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