第2章第5節(2.5)「モビリティー」から、第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」の内容を抜粋して紹介する。自動運転技術に向けたコンソーシアムや、センシング技術を取り上げる。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
前々回から、第2章第5節(2.5)「モビリティー」の概要をご説明している。第2章第5節(2.5)「モビリティー」は、第1項(2.5.1)「はじめに」、第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」、第3項(2.5.3)「電動化技術」、第4項(2.5.4)「EMC・ノイズ対策」、第5項(2.5.5)「日本のモビリティー産業界への提言」で構成される。今回は前回に続き、第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」の内容を抜粋してご報告する。
第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」は以下の4つの項目、「2.5.2.1 開発動向」「2.5.2.2 自動運転と遠隔操作の要素技術」「2.5.2.3 センサの開発動向」「2.5.2.4 スマート農業への活用事例(農耕機、ドローン)」で構成される。前回は運転自動化の段階(レベル)を簡単に説明するとともに、レベル3とレベル4の自動運転車両の開発状況を述べた。
自動運転とその関連技術の開発に取り組んでいる企業は膨大な数にのぼる。さまざまな業種の企業による協業が、レベル3以上の自動運転の開発と普及には欠かせない。業種では自動車メーカーと自動車部品メーカー(ティア1)はもちろんのこと、半導体メーカーや運転自動化システム(プラットフォームおよびソフトウェア)の開発企業、通信事業者、高精度3次元地図メーカーなどが開発に関わっている。
そしてこれらの企業群は、共同開発や事業展開などのコンソーシアムを構成して開発と市場開拓の効率化を図っていることが多い。日本ではトヨタ自動車とソフトバンクがモビリティーサービス事業の合弁会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を設立して2019年2月1日に事業を開始し、2019年3月28日には自動運転車両を活用したモビリティーサービスの推進と環境整備を担うコンソーシアム「MONTET(モネ)コンソーシアム」を設立した。2023年6月14日時点で、同コンソーシアムには748社・団体が参加している(参考)。
中国ではインターネット検索エンジン最大手のBaidu(百度)が2017年4月に自動運転車両の開発コンソーシアム「プロジェクトアポロ(Project Apollo)」を設立した。176社・団体が参加しているとされる(実装技術ロードマップ本体書籍177ページの記述による)。
また台湾の電子機器製造サービス企業Foxconnは2021年7月6日に電気自動車(EV)のオープン開発プラットフォーム「MIH(Mobility In Harmoniy)」を設立した。MIHのウェブサイトを筆者が2023年7月1日に閲覧した時点では、参加企業は2663社・団体という膨大な数に達している。
自動運転の要素技術としては最近、車両の状態を検知するセンシング技術が大きく進化しつつある。センシング技術には、LiDAR(Light Detection and Ranging)、カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーなどがあり、それぞれが長所と短所を有する。そこで複数のセンシング技術を組み合わせることで、車両と周囲の状態をリアルタイムで検知することが主流になってきた。
例えば前回で述べたホンダの運転自動化レベル3対応高級セダン「レジェンド」の運転自動化システム「Honda SENSING Elite」は、LiDARを5個(前方に2個、後方に3個)、ミリ波レーダーを5個(前方に3個、後方に2個)、フロントカメラを2個、超音波センサー(ソナー)を12個と合計で24個と多くのセンサーを搭載した。
そこで実装技術ロードマップの「2.5.2.3 センサの開発動向」では、LiDAR、カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー、運転者モニタリングの開発動向を述べるとともに、実装基板の事例を写真で紹介した。詳しくはロードマップの本体(書籍)を参照されたい。
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