RISC-Vコアの採用を車載分野へと広げるためには、適切なツールチェーンが不可欠である。その中で、最も重要なのが機能安全への対応だ。
RISC-VプロセッサコアIP(Intellectual Property)を手掛ける米SiFiveの車載用RISC-V CPU IPは、インフォテインメントやコネクティビティ、ADAS(先進運転支援システム)などの車載アプリケーションに対応し、これらの機能を実現するために進化を続けている。しかし、自動車メーカーやサプライヤーの組み込みソフトウェア開発者は、適切なツールがなければ、RISC-Vが提供するエネルギー効率や簡易性、セキュリティ、柔軟性を最大限に活用することができない。
安全認証の規格は何年も前から存在しているが、そうした規格への関心と利用はここ数年で劇的に高まっている。車載システムでは、自動車の機能安全の規格である「ISO 26262」の取得が求められることが多い。アプリケーションの機能安全の認証を取得することは、自動車業界では当然のことだが、このプロセスはRISC-Vツールチェーンのエコシステムでは本格的には行われておらず、幅広い市場から参入する多くのプレイヤーは、組み込みシステムの安全性に対する専門知識が欠如している。
車載用RISC-Vコアは、車載機能の安全のために設計されていて、システマチックな障害だけでなくランダムなハードウェア障害も防止する。そして、セーフティクリティカルな機能や機能安全要件を伴うプロジェクトに着手しようとしている組み込み開発者は、使用するツールが安全関連の開発に適していると何らかの形で認定される必要があることを認識している。組み込み開発者にとって、これは何を意味するのだろうか?
機能安全チェックリストを完成させるために必要な全てのプロセスとテストを完了することは、従来、非常に困難なプロセスだった。さらに、高信頼性規格では、開発者が特定の開発ツールを選択するにあたり、そのツールが未認定の場合、広範な正当性を提供する必要がある。だが、ツールのコンプライアンスの証明は、開発コストと時間を増大させる。
開発ツールの機能安全認証は、主に以下の3つを意味している。
1)コードをコンパイルする際に、信頼性が高く再現性のある結果が得られることを保証する、厳格な認定プロセスを踏んでいる
2)さまざまな機能安全規格が定める特定の要件で、ツールがどう機能するかを管理するための開発プロセスが整備されている
3)ツールのテストと品質測定によって、さまざまな言語規格への準拠が検証されている
機能安全のために独自のツールチェーンを検証するには、費用と時間がかかる。ツールの認証には最大12カ月かかり、フルタイムの従業員数人が従事する必要がある。
さらに、今日の開発プラクティスでは、品質を確保し、スケーラブルでクロスプラットフォームのビルドサーバトポロジーでビルドとテストを継続的に実行するための自動化されたプロセスが必要である。継続的インテグレーション(CI)および継続的デリバリー(CD)パイプラインは、至る所で使用されている。CIおよびCDのこれらの最新ワークフローによって、企業はビルドおよびテスト環境を自動的にプロビジョニングし、リリースを生産環境に動的に展開できる。
組み込み開発者は、認証されたクロスプラットフォームビルドツールチェーン(Ubuntu、Red Hat、Windows)によって、安全関連プロジェクトでツールを最小限の手間で使用でき、適切なサービスが含まれたツールを選択することで、ツールの選択と投資が初日から保護される。
組み込み開発者は、RISC-Vコア用の事前認証済み開発ツールを使用して、厳格な認証プロセスを短縮することで、市場投入までの時間を短縮できる。同ソリューションと、車載コアおよび事前認証済み開発ツールの専門知識(組み込みにおける40年以上の経験)を組み合わせることで、クロスプラットフォームにおいても、車載アプリケーションに最高の性能と安全性を提供できる。機能安全は、多くの組み込みシステムにおいて最も重要な機能の一つであり、企業は開発ツールをシステム認証における不可欠な要素と見なす必要がある。
組み込み開発ツールのベンダーであるIAR SystemsとSiFiveは強力なパートナーシップを締結し、自動車業界向けのRISC-V技術の成功を推進している。SiFiveは商用RISC-VコアIPのリーダーで、IARのツールチェーンは組み込みアプリケーションの構築に最も広く使用されているソリューションの一つである。
IARは、SiFiveのRISC-Vに関する長期的なロードマップや、機能安全認証の開発ツールを利用する顧客を含む、ISO 26262認証済みRISC-Vコアに対応する自動車サプライチェーンをサポートすることで、業界の変化を促進することを目指している。
※著者:Anders Holmbergは、IAR SystemsのCTO(最高技術責任者)を務める。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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