旭化成は、リチウムイオンキャパシター(LiC)の設計と製造技術についてライセンス活動を本格的に始める。独自の新ドープ法により、LiCの容量や入出力性能が従来品に比べ向上。汎用的な部材や設備が利用できるため、製造コストを削減することも可能になるという。
旭化成は2023年7月、リチウムイオンキャパシター(LiC)の設計と製造技術についてライセンス活動を本格的に始めると発表した。独自の新ドープ法により、LiCの容量や入出力性能が従来品に比べ向上。汎用的な部材や設備が利用できるため、製造コストを削減することも可能になるという。
LiCは、正極に電気二重層キャパシター(EDLC)と同じ材料を、負極にはリチウムイオン電池(LiB)と同じ材料を、それぞれ用いた蓄電デバイス。LiBと比較して入出力特性が高く、瞬間的なパワーが必要な用途に適している。高速充電も可能である。これ以外にも、サイクル寿命が長く、安全性にも優れているという特長を備えている。
ところが従来のLiCは、リチウムのプレドープ工程で、「穿孔箔(はく)」や「金属リチウム箔(はく)」といった特定の部材が必要となる。その上、金属リチウム箔(はく)を安全に取り扱うための製造環境を整えなければならず、製造コストが上昇する要因となっていた。
旭化成では、リチウムイオン供給源として安価な「炭酸リチウム」を用い、負極材料にリチウムのプレドープをする独自の新ドープ法を開発した。この方法は、正極に炭酸リチウムを含ませ、この炭酸リチウムを初回充電時にほぼ100%分解することでプレドープを行う技術。
この方法を用いることで、LiBと同じような部材と類似した設備でLiCを製造することが可能となる。その上、容量と入出力特性は、従来のLiCと比較してそれぞれ1.3倍以上も向上していることを確認した。
旭化成が提供するライセンスには、LiC技術に関わる知的財産だけでなく、設計やパイロット設備での製造技術といった技術ノウハウも含まれる。新たな手法で開発されたLiCについては、停車駅ごとに充電を行うことができる架線レスの路面電車やバスなどへの応用を視野に入れている。
また、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを利用したエネルギー貯蔵システム(ESS)では、LiBとLiCを併用することでLiBの充放電負荷を削減し、LiBの寿命を延ばすことができるという。
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