大阪大学の研究グループは、SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの絶縁膜界面における欠陥を大幅に減らす技術を開発した。SiC MOSFETの性能や信頼性のさらなる向上につながる技術とみられている。
大阪大学大学院工学研究科の藤本博貴氏(博士後期課程)と小林拓真助教、渡部平司教授らによる研究グループは2023年8月、SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの絶縁膜界面における欠陥を大幅に減らす技術を開発したと発表した。SiC MOSFETの性能や信頼性のさらなる向上につながる技術とみられている。
SiCは、Si(シリコン)に比べバンドキャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が10倍であり、高温かつ高電圧で動作可能なパワーデバイス用材料として期待されている。ところが、SiC MOSFETでは、絶縁膜/SiC界面における欠陥によって、期待する性能が得られなかったという。
界面欠陥を抑える方法としてこれまで、SiO2/SiC構造を形成した後に有毒な一酸化窒素(NO)ガス中で高温熱処理し界面に窒素を導入する方法(界面窒化)が実用化されてきた。しかし、界面窒化層の安定性向上などに課題もあり、その効果は限定的であったという。
研究グループは今回、高品質な絶縁膜/SiC界面を実現する新技術を開発した。具体的にはまず、独自の高密度窒素プラズマ技術を用い、SiC表面に緻密で安定な原子層厚の窒化層を形成する。その後、窒化層の構造を保持したまま、炭酸ガス(CO2)中で熱処理することによって、絶縁性に優れたSiO2絶縁膜を堆積することに成功した。
新技術を用いることで、絶縁膜/SiC界面の欠陥準位密度を従来法に比べ約4分の1に低減できたという。これによって、SiC MOSFETの省エネ性能や信頼性の向上が期待できるという。
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