矢野経済研究所はSiC(炭化ケイ素)などのワイドバンドギャップ(WBG)半導体単結晶の世界市場に関する調査結果を発表した。2023年の世界市場は前年比47.1%増の268億8500万円になる予測だ。市場は拡大を続け、2030年には3176億1200万円に達する見込みだという。
矢野経済研究所は2023年8月28日、SiC(炭化ケイ素)などワイドバンドギャップ(WBG)半導体単結晶の世界市場に関する調査結果を発表した。
SiC、GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体単結晶は、パワー半導体デバイスを中心に採用が進んでおり、市場も堅調に拡大している。
2023年の世界市場(メーカー出荷額ベース)は268億8500万円になる予測で、前年の推計金額である182億7100万円から47.1%増となる。材料別での2023年の市場規模は、SiCが202億9300万円(構成比75.5%)、GaNは46億4700万円(同17.3%)、Ga2O3(酸化ガリウム)が5億3100万円(同2.0%)、AlN(窒化アルミニウム)は10億8000万円(同4.0%)、ダイヤモンドが3億3500万円(同1.2%)の見込み。太陽光発電装置や自動車など、多くの用途で採用が進むSiCが市場の4分の3を占める見通しだ。
同調査によると、SiC市場は本格的な成長期に入っていて、2025年以降の車載用途への採用が急成長のポイントになるという。LEDやLDなどの照明用途で採用が進むGaNは、パワーデバイスや高周波用途では優れた特性を持っており、従来の課題だったウエハーの大口径化や大量供給にメドが立ったことから、GaN on GaNデバイスとして展開される時期が近づきつつある。Ga2O3はSiCデバイスと比較してコストや性能のポテンシャルが高いことから参入プレイヤーも増えてきており、パワーデバイス市場に食い込む勢いだという。AlNは深紫外線のLED用単結晶として一定の需要を獲得している一方、サファイア基板を用いたタイプの深紫外線LEDの性能が向上しているので、AlN基板の強みを発揮できる領域への展開が課題とされる。
同研究所は2023年の注目トピックとして、ダイヤモンドの研究開発が加速していることを挙げる。ウエハーメーカーのIPO(新規公開株式)や共同研究などの成果が増え、材料やデバイスの開発が進んでいるという。2023年現在、オーブレー(旧アダマンド並木精密宝石)から直径2インチのダイヤモンドウエハーの供給が始まろうとしているほか、大熊ダイヤモンドデバイスでもダイヤモンドを使用した電子デバイスの量産化に向け準備が進んでいるとする。同研究所はダイヤモンドの市場拡大について、ニッチかつ付加価値の高いデバイスに搭載され、他の材料が対応しきれないニーズに応えることが必須だとしている。
主にパワーデバイスでの採用がけん引力となり、ワイドバンドギャップ半導体単結晶の世界市場は、2030年には3176億1200万円に達する見通しだ。材料別ではSiCが3073億4800万円、GaNが52億8000万円、Ga2O3が30億5600万円、AlNは13億5000万円、ダイヤモンドが5億7800万円。材料別構成比はSiCが96.8%を占めており、ワイドバンドギャップ半導体の中でもSiC市場の成長予測が突出して高いことが見て取れる。
同調査は2023年4〜7月、ワイドバンドギャップ半導体単結晶メーカーや関連企業、研究機関などを対象に行われた。
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