酸化物で初、熱的相変化で電気抵抗スイッチング:多値記憶の相変化メモリに応用も
東北大学は筑波大学と共同で、酸化物では初めて熱的相変化を活用した電気抵抗スイッチングに成功した。多値記憶が可能な相変化メモリへの応用が期待される。
東北大学の河底秀幸助教と松本倖汰博士、福村知昭教授は2023年9月、筑波大学の西堀英治教授と共同で、酸化物では初めて熱的相変化を活用した電気抵抗スイッチングに成功したと発表した。多値記憶が可能な相変化メモリへの応用が期待される。
結晶とアモルファスの熱的相変化を活用した電気抵抗スイッチングは、GeSbTe合金などのカルコゲナイドで実証されてきた。しかし、酸化物については、化学組成あるいは外場(熱や磁場など)によって電気抵抗を変調できるものの、熱的相変化を活用した電気抵抗スイッチングはこれまで実現できなかったという。
研究グループは今回、Sr/Bi配列が秩序化した層状ニッケル酸化物「Sr2.5Bi0.5NiO5」(秩序相)を大気中で熱処理し、結晶構造の変化を調べた。SPring-8による放射光粉末X線回折の結果、600℃以下の低温で処理すると、岩塩層のSr/Bi配列が秩序状態から無秩序状態へと系統的に変化することが分かった。
上図は異なるSr/Bi配列を有する「Sr2.5Bi0.5NiO5」の結晶構造。下図はダブルペロブスカイト構造に変化した新物質「Sr2BiNiO4.5」[クリックで拡大] 出所:東北大学
700〜900℃の中温で処理すると、ダブルペロブスカイト構造の新物質「Sr2BiNiO4.5」に変化した。また、950℃以上の高温で処理すると、元の秩序相である「Sr2.5Bi0.5NiO5」に戻ることを発見した。
さらに、秩序相と無秩序相の「Sr2.5Bi0.5NiO5」では、低温処理(600℃)と高温処理(950℃)によって熱的相変化を示した。いずれも常磁性金属でありながら、室温の電気抵抗は102倍と大きく異なり、スイッチングができることを確認した。
秩序相「Sr2.5Bi0.5NiO5」とダブルペロブスカイト構造「Sr2BiNiO4.5」では、中温処理(800℃)と高温処理(950℃)で熱的相変化を示し、室温の電気抵抗は109倍と極めて大きくなり、スイッチング可能なことが分かった。
上図は秩序相と無秩序相における電気抵抗スイッチング。下図は秩序相とダブルペロブスカイト相における電気抵抗スイッチング[クリックで拡大] 出所:東北大学
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