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コスト9割減での縦型GaN実現へ、OKI/信越化の新技術QST基板上のGaN層を、別基板に接合

OKIは2023年9月5日、信越化学工業と共同で、低コストな縦型GaNパワーデバイス実現につながる新技術を開発したと発表した。新技術を用いた縦型GaNパワーデバイスが実現すれば、既存技術と比較しコストを約10分の1に低減可能だという。

» 2023年09月12日 10時00分 公開
[永山準EE Times Japan]

 OKIは2023年9月5日、信越化学工業(以下、信越化学)と共同で、低コストな縦型GaN(窒化ガリウム)パワーデバイス実現につながる新技術を開発したと発表した。GaN成長専用の複合材料基板「QST基板」からGaN機能層のみを剥離し、異種材料基板へ接合する技術だ。新技術を用いた縦型GaNパワーデバイスが実現すれば、既存技術と比較しコストを約10分の1に低減可能だという。

縦型GaNの課題を解決

 GaNはその特性から、高性能なパワー半導体材料として注目され近年、開発/市場導入が加速している。GaNパワーデバイスには、シリコンウエハー上にGaNを結晶成長させる「横型」と、GaN基板をそのまま使用する「縦型」がある。シリコンウエハーを用いる横型は比較的低コストでGaNの高周波特性を得られるものの、650Vを超える高耐圧を求める場合には不向きだ。一方、縦型は横型に比べ高電圧、大電流に適するが、GaNウエハーが高価かつサイズも2〜4インチ程度と小径であるなど、コスト面の課題がある。

 今回、OKIと信越化学が開発した新技術は、信越化学が独自改良したQST基板上で成長した単結晶GaNを、OKIが開発した「CFB(Crystal Film Bonding)技術」によって剥離し、異種材料基板へ接合するというもの。これによってGaNの縦型導電とウエハーの大口径化を同時に実現でき、「社会実装可能な縦型GaNパワーデバイスの実現と普及に貢献する」としている。

厚膜GaN層を、さまざまな基板に接合可能

 QST基板は、米国Qromisが開発したGaN成長専用の複合材料基板で、信越化学は2019年にQromisとの間でライセンス契約を締結している。QST基板はGaNと熱膨張係数が同等であるため、反りやクラックの抑制が可能だ。この特性から、8インチ以上のウエハーでも高耐圧な厚膜GaNの結晶成長が可能となり、大口径化の課題を解決するとしている。

 一方、OKIのCFB技術は、このQST基板から高デバイス特性を維持した状態でGaN機能層のみを剥離することが可能だ。さらに、GaN結晶成長に必要な絶縁性バッファー層を除去し、「オーミックコンタクト」(オームの法則に従った線型の電流-電圧曲線を有する電気的接合)が可能な金属電極を介してさまざまな基板に接合するできるという。具体的には、シリコンのほか、SiC(炭化ケイ素)やGaN、GaAs(ガリウムヒ素)、InP(インジウムリン)など化合物半導体ウエハーおよび、ガラスウエハーといった基板への接合が可能となる。OKIは「CFB技術は、半導体ウエハーと同等の表面平たん性があれば接合が可能だ」と説明している。

新技術の概要を示した図[クリックで拡大] 出所OKI 新技術の概要を示した図 出所:OKI

 両社は、これらの技術によってGaN層を放熱性の高い導電性基板に接合することで、高放熱と縦型導電の両立を実現が可能となるとしている。OKIは、「両社の技術により2つの課題が解決し、縦型GaNパワーデバイスの社会実装への道が大きくひらけた。QST基板上の単結晶GaNとCFB技術を組み合わせ、縦型GaNを実現できれば、コストを約10分の1に低減できると想定している」と述べている。

 今後、GaNデバイスを製造する顧客に向け、信越化学がQST基板やエピタキシャル基板を提供し、OKIがパートナーリングやライセンスによりCFB技術を提供する予定だ。OKIは同技術の顧客への展開について、2024年度の開始を見込んでいるという。

 なお、信越化学のQST基板は現在、6インチと8インチのラインアップしている。さらに、大口径化に有利な材料特性を生かし、12インチ化にも取り組んでいて、2024年にサンプル配布予定だという。

 OKIのCFB技術は現在、6インチ対応が可能で、OKIは「今後8インチ対応を目指しており、2025年のR&D着手を目標に準備を進めている」と説明している。また対応可能なGaN層の厚みについては、「現時点で7μmまで実績がある」と説明。OKIは、「高耐圧で必要な厚みは20μm程度と考えており、今後の開発によって達成可能と考えている」と述べている。

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