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ArmのIPO、ソフトバンクの目標は「楽観的過ぎ」情報筋が指摘(1/2 ページ)

業界観測者が米国EE Timesに語ったところによると、ソフトバンクグループがArm株式の売却によって得る資金は、当初期待されていたより少なくなるようだ。その理由の一つとして挙げられるのが、Armが直面し続けるいくつかの不確実要素だ。

» 2023年09月12日 17時17分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 業界観測者が米国EE Timesに語ったところによると、ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)がArm株式の売却によって得る資金は、当初期待されていたより少なくなるようだ。その理由の一つとして、英国のチップIP(Intellectual Property)企業であるArmが直面し続けるいくつかの不確実要素が挙げられる。

直面する複数の不確実要素

 匿名希望のアナリストによると、ArmのIPO説明会は2023年9月5日に潜在的投資家が参加する形で始まり、9月13日頃の株式公開で締めくくられるという。

 同アナリストは「ArmがIPOのプロセス中、われわれに会うことはない。全て非公開で進められている」と述べた。

 匿名を条件に話してくれたArmに近い情報筋によると、Armの新たな投資家は、取締役会の議席や配当金を享受するわけではないという。また、「IPOで得た資金はソフトバンクGによる投資ポートフォリオの再配分に役立つだろうが、ArmがIPOから資金を得ることは一切ない」とその筋は付け加えた。

 Armの所有権を100%有するソフトバンクG(厳密にはソフトバンクGが75%、SoftBank Vision Fundが25%)は、AppleやAMD、NVIDIA、IntelといったArmの顧客に株式の10%を売却する見込みだ。いずれの企業も長期にわたりArmのIPへのアクセスを維持することを望んでいる。Bloomberg Newsによると、ソフトバンクGは今回のIPOで50億〜70億米ドルを得ることを狙っているが、これは当初の目標より100億米ドルほど少ない金額だという。結果としてArmには、当初の目標額である700億ではなく、総額で500億〜600億米ドルの資金がもたらされる見込みだ。

 ソフトバンクGは2022年にArmを400億米ドルでNVIDIAに売却しようとした。だが、米国と欧州の規制当局から独占禁止法への抵触を指摘されてその試みは失敗に終わり、その後今回のIPOを目指すこととなった。前出のArmに近い筋によれば、500億米ドルという評価も楽観的過ぎる可能性があるという。

 この匿名の情報筋は「ソフトバンクGは2016年にArmを320億米ドルで買収した。Armはその後いくつかの点で成長したものの、今は当時よりはるかに悪い位置にいると私は考えている。現在では深刻な競争が存在し得る。スマートフォンがコモディティ化して市場は頭打ちの状態であるし、中国での事業運営は制御不能な状況に陥ってるように見える。その上、10%の売却先と見込まれている大手企業では大幅な自給自足化が進んだ」と述べた。

Qualcommとの訴訟

 また、この情報筋によると、それらの最大手企業との間でさまざまな訴訟が進行中であることから、Armのパートナーシップは断片的な状態にあるのだという。前出の技術業界のアナリストもこの見解を支持した。

 同アナリストは「特に考慮すべきはQualcommの訴訟だ。QualcommによるNuviaの買収に端を発した問題で、これは2024年後半に裁判にかけられる可能性が高い。Armはこれまで、戦略的ライセンサーと訴訟を起こしたことはなかった」と述べる。

 Armは2022年、QualcommとNuviaがライセンス契約を破り、その結果、ライセンスのない製品にArmの商標を使用して同社の商標権を侵害したとして、両社に対して訴訟を起こした。

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