従来のシリコン基板上にGaNを形成するGaN on シリコンの場合、シリコンとGaNの熱膨張係数が大きく異なるため、引張応力で大きなソリが生じてしまう。QST基板は、熱膨張係数がGaNと一致していることから、ソリが小さくクラックの抑制も可能なため、大口径で高品質な厚膜GaNエピタキシャル成長が可能になるという。山田氏によると、同社では既に20μm以上のGaNエピタキシャル成長を、高品質で実現しているという。山田氏は「いくつかの工夫によって、欠陥密度は5×106程度を実現している。つまり、一般的なGaN on シリコンの1000分の1程度まで下げることが可能になっている」と説明している。
また、熱膨張係数がGaNと一致していることからバッファー層も簡略化が可能となる。下図の通り、6μmのGaN層成長を行うケースでは、シリコン基板を用いた場合の半分の成長時間で、GaN層の厚さは約2倍にすることができるという。山田氏は、「エピタキシャル装置のスループットが上がり、コストも低減できる」と述べていた。
さらに、GaN on シリコン用の場合、ソリ抑制のために厚い基板が必要となり(6μmのGaN成長を行う場合、1mm以上の厚さが必要)、特別仕様の半導体装置を用いているというが、ソリの小さいQST基板ではSEMIやJEITA規格に準拠する基板厚みで対応可能なため、装置の改造/改良は不要で「一般的なシリコンのプロセスをそのまま使用できる」という。また、QST基板はセラミックコアであり大口径化も可能で、信越化学では既に8インチまでラインアップがある。山田氏は、「われわれの8インチのQST基板が、2インチのGaN基板と同程度の価格だ。つまり、QST基板でデバイスを作る場合、一度でおよそ16倍の数を作ることができ、大幅な低コスト化が可能だ」と説明している。同社は300mm(12インチ)のQST基板も開発中で、2024年中にサンプル提供を開始する予定だ。
このほかの特長として、QST基板は既にさまざまなGaNデバイスを実証済みであること、そして今回のOKIのCFB技術と高い親和性があることを挙げた。
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