両社は、QST×CFB技術による縦型GaNパワーデバイス製造プロセスに向けたビジネスモデルについても説明した。具体的には「Pre CFB」「Post CFB」の2種類を想定している。
Pre CFBは、デバイス前工程の前に、OKIがCFB技術によってQST基板からGaN機能層を剥離。さらにデバイスメーカーが指定した基板に接合した上で提供するビジネスモデルだ。デバイスメーカーは、その基板を用いてGaN HEMT/MOSEFTデバイスを作る。Post CFBは、まずデバイスメーカーが、信越化学から供給されたQST基板にデバイスを形成し、その後、OKIがCFBを用いて機能層を別の基板に転写するというビジネスモデルだ。谷川氏は「Pre CFBはゼロ設計からできる一方で、Post CFBは今あるアーキテクチャをそのまま使用できる。立ち上げが早いのは後者になるだろう」と説明していた。
また、谷川氏は今回の新技術について「縦型GaNパワーデバイスはもちろん、横型パワーデバイスやLEDなど全てのGaNデバイスに対応可能だ。技術の完成度を上げながらデバイスメーカーとともに実証していきたい」と語っていた。
OKIは同技術の顧客への展開について、2024年度の開始を見込んでいるという。また、量産開始時期としては「まずはスモールスタートで、2026年ごろからと考えている」とした。初期段階では自社の半導体工場で対応していく考えで、2025年ごろには8インチ対応も可能にするための準備も進めていく方針だ。さらに、今後市場が本格的に拡大した場合、顧客側で機能層を貼れるフィルム素材のようなものに仕立てて提供するところまでをOKI側で対応し、その後は実装装置さえあれば、さまざまな場所で接合できるようにする、水平分業的なビジネスの展開も検討しているという。
一方の信越化学は、2024年に向け、QST基板の生産能力を2倍に引き上げるための投資を進めているという。山田氏は「将来的にこの技術が普及していけば、現在われわれの考えているレベルでは全く足りないと思う」と、さらなる対応の可能性についても言及した。なお、300mmのQST基板開発の状況については「300mmウエハーに要求される平たん度は6、8インチと比べて高く、その実現のためにセラミックコアの平たん度を向上させる必要がある。単に6、8インチからの延長線上ではだめで、さらに改善するための解を探している」などと述べていた。また、縦型デバイス化のためのさらなる結晶性の改善についても、「アイデアは山ほどあり、一定の時間を掛ければかなり改善できると確信している」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.