九州大学は、無線電力伝送(WPT)システムにおいて、送信機と受信機間の磁場を制御するための「メタサーフェス」を新たに開発した。これを応用することでWPT利用時の伝送距離や位置ずれといった課題を解決し、これまでにはないワイヤレス充電環境を実現できるという。
九州大学大学院システム情報科学研究院のRamesh Pokharel教授らによるグループとMohamed Aboualalaa外国人特別研究員は2023年10月、無線電力伝送(WPT)システムにおいて、送信機と受信機間の磁場を制御するための「メタサーフェス」を新たに開発したと発表した。これを応用することでWPT利用時の伝送距離や位置ずれといった課題を解決し、これまでにはないワイヤレス充電環境を実現できるという。
スマートフォンやタブレット端末を始め、ペースメーカーや人工心臓といった埋め込み型医療機器などでは利便性を高めるため、「いつでもどこでも無線で電力伝送ができる」ワイヤレス充電が極めて重要な技術の一つになっている。ところが、現行の技術では、受信機と送信機における伝送距離が短く、高い伝送効率を得るためには正確な位置合わせが必要だ。
研究グループは今回、これらの課題解決に向け、新たなアプローチを行った。それは、特定の周波数帯域で負の屈折率を有する人工誘電体「メタサーフェス」を開発し、導入したことである。特異な光学特性によって、送信機と受信機間の磁場を効果的に制御し、長距離の電力伝送を実現した。
実験の結果、従来のWPTシステムと同じ伝送効率であれば、最大300%まで伝送距離を伸ばすことができるという。メタサーフェスを用いない場合、伝送距離40mmにおける伝送効率は8%であった。これに対しメタサーフェスを応用すると、伝送効率は78%まで向上した。受信機と送信機の位置ずれに起因するミスアラインメントの問題も大幅に改善されることが分かった。
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