九州大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、酸化物全固体電池に向けて、750℃という低温で焼結可能な電解質材料を開発した。開発した材料は室温でのイオン伝導率が高く、この材料を用いた全固体電池は、室温環境で80サイクルの充放電が可能だという。
九州大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは2023年7月、酸化物全固体電池に向けて、750℃という低温で焼結可能な電解質材料を開発したと発表した。開発した材料は室温でのイオン伝導率が高く、この材料を用いた全固体電池は、室温環境で80サイクルの充放電が可能だという。
酸化物系固体電解質を用いた全固体電池は、発火などがなく安全性の高い電池である。しかし、電池材料間を接合するのに1000℃を超える高温で焼結しなければならない。これによって、電極材料と固体電解質が反応し、電池性能が低下するといった課題があった。
研究グループは、酸化物固体電解質の中でもイオン伝導度が高い「Li7La3Zr2O12(LLZ)」に、焼結助剤をナノレベルで複合化した独自材料を開発した。この材料は、少量の焼結助剤を添加するだけで効果が得られるという。LLZ中にはCa2+とBi5+をドープ、焼結助剤としてLi-Ca-Bi-O酸化物を適用した。これにより、LLZと助剤の濡れ性・溶解度を向上させた。
開発した材料を750℃で焼結をしたところ相対密度は93%、室温でのイオン伝導率は1.2×10-3S/cmとなった。また、複合化する助剤量によって焼結性だけでなく、LLZ中のBi5+占有率を変化させ、イオン輸送経路のボトルネックサイズが調整できることを突き止めた。さらに、開発した材料を用いて作製した全固体電池は、室温環境で80サイクルの充放電が可能なことを確認した。
今回の研究成果は、九州大学大学院総合理工学府博士課程3年(兼デンソー)の林真大氏、総合理工学研究院の渡邉賢准教授、島ノ江憲剛教授および、物質・材料研究機構(NIMS)の高田和典博士、大西剛博士らによるものである。
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