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低炭素PCB量産で協業、台湾LITE-ONとエレファンテックCO2排出量を75%削減

LITE-ON Technologyとエレファンテックは2023年11月15日、低炭素プリント基板(PCB)の量産化推進に向けてMoU(協業覚書)を締結した。エレファンテックは、独自手法で製造する低炭素PCB「P-Flex」をLITE-ONのPCキーボード向けバックライト用に提供する。

» 2023年12月11日 13時30分 公開
[浅井涼EE Times Japan]

 LITE-ON Technology(以下、LITE-ON)とエレファンテックは2023年11月15日、低炭素プリント基板(PCB)の量産化推進に向けてMoU(協業覚書)を締結した。

LITE-ON Technology日本法人 日本ライトン社長の酒屋へリオ氏(左)とエレファンテック社長の清水信哉氏(右) LITE-ON Technology日本法人 日本ライトン社長の酒屋へリオ氏(左)とエレファンテック社長の清水信哉氏(右)[クリックで拡大]

CO2排出量75%削減、エレファンテックの独自製法

 台湾を拠点とするLITE-ONは、光学部品や電子モジュールの製造販売をグローバルに展開する。エレファンテックは東京大学発のスタートアップで、金属インクジェット印刷で回路を形成する低炭素/省資源のPCB「P-Flex」の製造販売を手掛けている。

 P-Flexは、エレファンテックの独自製法である「ピュアアディティブ法」を活用する。回路を「必要な部分にだけ印刷する」という技術だ。従来のPCB製造は、基材の全面に銅の薄膜を形成して、その後不要な部分を溶解して廃棄することで回路を形成する。最終的に廃棄する分、材料が無駄になることや製造過程で大量の水が必要になることから環境負荷が高く、エレファンテック社長の清水信哉氏は「今後サプライチェーンのカーボンニュートラルを実現するためには必ず解決しなくてはいけない部分だ」と指摘する。

 これに対してピュアアディティブ法では、インクジェットプリンタを用いて基材上に銅ナノインクを印刷し、無電解めっきで銅を成長させることで回路を形成する。初めから必要な部分にのみ配線を形成するため、材料や水の使用量を削減し、環境負荷を軽減できる。エレファンテックは、この手法では従来に比べて銅の使用量を70%、CO2の排出量を75%、水の使用量を95%削減できるとしている。「PCB製造のデファクトスタンダード(事実上の標準)を目指す」(清水氏)

プリント基板の従来製法と環境負荷エレファンテックの独自製法「ピュアアディティブ法」 左=プリント基板の従来製法と環境負荷/右=エレファンテックの独自製法「ピュアアディティブ法」[クリックで拡大] 出所:エレファンテック

まずはPCキーボードに低炭素PCBを採用

 今回のMoU締結によりエレファンテックはまず、LITE-ONのPCキーボード向けバックライト用にP-Flexを提供する。

 LITE-ONはPCキーボードを月間400万台製造していて、そのうちバックライト搭載の200万台にP-Flexを使用する可能性がある。しかし、エレファンテックの現状のP-Flex生産能力は年間数百万ピースと大きく不足している。そのため、今後はLITE-ONの生産拠点内にエレファンテックの製造装置を導入して増産することなども検討するという。

 協業の意義について、清水氏は「この数年間でP-Flexの量産体制を整え、主に国内企業向けに少量生産を行ってきた。今後のグローバル展開や大量生産に向けて、この発表は重要な意味を持つ」と語る。LITE-ONの日本法人である日本ライトン営業本部長の遠藤栄介氏は「エレファンテックが持つ技術と、LITE-ONが持つ市場へのアプローチ力を組み合わせて、広く市場に展開していきたい」と述べた。

 LITE-ONは、2024年中にP-Flexを使用したPCキーボードを発売することを目指していて、その後LenovoやDell、HPといった顧客にプロモーションしていくという。

 エレファンテックはキーボード以外の製品への提供について明言しなかったものの、LITE-ONは「P-Flexの技術は、LITE-ONの多種多様な製品に使用できるのではないか」と可能性を示唆した。

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