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トヨタと出光が全固体電池の量産に向け協業、27〜28年に実用化世界標準の技術開発を目指す

トヨタ自動車と出光興産は2023年10月12日、全固体電池の量産化に必要な硫化物固体電解質の開発やサプライチェーン構築に向けて協業を発表した。全固体電池の実用化は、2027〜2028年を目指している。

» 2023年10月19日 14時30分 公開
[半田翔希EE Times Japan]

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)と出光興産(以下、出光)は2023年10月12日、全固体電池の量産化に向けて協業を発表した。2027〜2028年を目標とする実用化やその後の量産化に向け、硫化物固体電解質の開発や生産性向上、サプライチェーン構築などで連携する。

 今回の協業は、バッテリー電気自動車(BEV)向けの硫化物固体電解質の開発が対象だ。第1段階として、硫化物固体電解質の開発と、量産化に向けたパイロット(量産実証)設備の準備を行う。第2段階として、パイロット設備を活用して、硫化物固体電解質の量産化を目指す。第3段階として、第2段階の実績を基に、将来的な本格量産と事業化に向けた検討を行う。

左から、トヨタ CN(カーボンニュートラル)先行開発センター長の海田啓司氏、社長の佐藤恒治氏、出光 社長の木藤俊一氏、専務執行役員の中本肇氏 左から、トヨタ CN(カーボンニュートラル)先行開発センター長の海田啓司氏、社長の佐藤恒治氏、出光 社長の木藤俊一氏、専務執行役員の中本肇氏[クリックで拡大] 出所:出光、トヨタ

 トヨタ社長の佐藤恒治氏は会見で「新しい全固体電池の実証は、ラボベースではメドが立っている。今後、出光のパイロット設備を使った量産化の検証と、安定的な原料調達計画を立て、まずは世の中に出すことが重要だと考えている」と語った。

 出光社長の木藤俊一氏は「今問われているのは、(全固体電池の)ポテンシャルや夢ではなく、『実現力』だ。出光は、EV(電気自動車)用の全固体電池の実用化に挑むトヨタの『実現力』を、その材料である固体電解質の製造/量産という『技術力』で支え、全固体電池の実用化を実現する」と強調した。

材料技術の融合で、全固体電池の耐久性を向上

 全固体電池は、高温/高電圧耐性に優れ、小型化や高性能化が可能なため、BEVの発展を支える次世代電池として注目されている。一方で、耐久性が低く、充放電を繰り返すと、正極/負極と固体電解質の間に亀裂ができ、電池性能が劣化するという課題がある。

 出光は2001年から、トヨタは2006年から、全固体電池の要素技術研究/開発に取り組んでいて、2013年以降は全固体電池の耐久性向上に向けて共同研究をしている。

 出光、トヨタの全固体電池開発に関する取り組み 出光、トヨタの全固体電池開発に関する取り組み[クリックで拡大]出所:出光、トヨタ

 佐藤氏は、共同研究について「出光は、柔軟性と密着性が高く、割れにくい特性を持つ固体電解質の技術を持っている。この技術とトヨタの材料技術を組み合わせることで、割れにくく、高い性能を発揮する材料の開発に成功した。今回、この新しい固体電解質に、トヨタグループの正極・負極材、電池化技術を組み合わせることで、全固体電池の性能と耐久性を両立できるメドが立った」と説明した。

 木藤氏は「今回の協業では、硫化物系固体電解質をターゲットとしている。硫化物系固体電解質は、BEVの航続距離の向上や充電時間の短縮に貢献する最有力素材で、同素材の原料は、石油製品の製造過程で副次的に発生する硫黄成分だ。そのため、出光が長年培った研究力と技術力を生かし、固体電解質の開発につなげることができた」と語った。

 なお、硫化物固体電解質に関する両社の特許保有件数の合計は約200件で「世界でトップクラス」(両社)だという。

出光のマテリアルフロー 出光、トヨタの硫化物固体電解質および硫化リチウムの特許出願数 左=出光のマテリアルフロー/右=出光、トヨタの硫化物固体電解質および硫化リチウムの特許出願数[クリックで拡大] 出所:出光、トヨタ

本格量産は2030年以降、場所はトヨタ本社地区が有力

 今後について、出光 専務執行役員の中本肇氏は「将来的には、世界標準として展開も検討する。しかし、まずは、開発する全固体電池をトヨタのBEVに搭載し、クオリティーを実感してもらうことが大切だ。量産実証を行う場所については未定だが、出光のプラントがある千葉県が有力だ」と述べた。

 佐藤氏は、「出光との協業により、全固体電池の開発を材料から電池(製品)まで一気通貫でできるようになった。開発の過程で改善が必要な際、原点(材料)に戻れることは、非常に強みになると考えている。全固体電池の量産時期については、2030年以降になると想定している。製造場所は未定だが、トヨタの本社地区(愛知県)を考えている」と説明した。

量産化技術の確立に向けた流れ量産化技術の確立に向けた流れ 量産化技術の確立に向けた流れ[クリックで拡大] 出所:出光、トヨタ

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