産業技術総合研究所(産総研)は、0.015K(−273.135℃)という超極低温におけるトランジスタのスイッチング特性を解明した。研究成果は量子コンピュータ用制御回路の設計などに適用できるとみられている。
産業技術総合研究所(産総研)先端半導体研究センター新原理シリコンデバイス研究チームの岡博史主任研究員と浅井栄大主任研究員、森貴洋研究チーム長らは2023年12月、0.015K(−273.135℃)という超極低温におけるトランジスタのスイッチング特性を解明したと発表した。研究成果は量子コンピュータ用制御回路の設計などに適用できるとみられている。
ICを構成するトランジスタの特性は温度環境によって変化する。宇宙・航空産業など特殊な動作環境で用いられるケースもあるが、一般的なICは室温(約300K)環境で動作させることが多い。
こうした中で、量子ビットに超伝導量子ビットやシリコン半導体量子ビットを用いる量子コンピュータは、制御回路を4K(−269.15℃)という低温環境で動作させる。このため、回路設計に当たっては実際の動作温度に依存するトランジスタの特性を正確に把握しておく必要がある。ところが、従来の半導体物理の理論では、特性を説明できなかったという。
研究チームは今回、0.015Kまでの超極低温における電気特性を測定した。トランジスタのスイッチング特性は、サブスレッショルド係数(S係数)で評価される。一般には低温になればS係数の値が小さくなり、スイッチング特性は向上する。ところが、S係数の温度依存性は50Kから1Kの温度帯で、半導体物理に基づく基本モデルを用いた予測とは異なることが分かっていたものの、その原因までは解明されていなかった。
そこで今回は、界面の欠陥に電子が捕らえられる「捕獲電子モデル」を理論計算に用いた。そうしたところ、実験結果と同じS係数の再減少を再現できた。S係数は電子の捕獲が始まると温度に対して一定となり、ほぼ満杯に捕獲されると再び減少を始めた。このモデルはこれまで提唱されてきた「可動電子モデル」とは逆の考え方だという。研究成果より、スイッチング特性は「界面の欠陥に捕獲される電子の量」によって決まることが分かった。
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