――東北大学は、スピントロニクス半導体/MRAM分野でどのような強みがありますか。
遠藤教授 材料やデバイスの研究/開発/製造から、回路設計技術、プロトタイプのチップ開発、チップを埋め込んだシステム開発、そこに至るまでの基盤技術の開発など、スピントロニクス半導体技術の開発に関わる一連の技術バリューチェーンを持っている。CIESなど、各研究を横串で連携し、社会にコミットできる体制があることも優位性といえる。
スピントロニクス半導体は、大野総長が発明/確立した分野だ。今日では、大野総長が発見し、東北大学が研究開発してきた材料が、スピントロニクス半導体技術を使ったICチップ開発のデファクトスタンダードになっている。東北大学は、MRAMの研究では他研究機関より10年以上先行して、MRAM関連の特許を約900件保有する。
しかし、スピントロニクス半導体は、今、この瞬間にも新しい技術が生み出されている非常に動きの速い分野だ。1つの技術で追いつかれると、どんどん突き放されていく可能性もある。東北大学は、気を引き締めて研究に励み、スピントロニクス研究における最先端のポジションを維持し続けなければいけない。
――スピントロニクス半導体技術やMRAMを使った製品事例は何がありますか。
遠藤教授 ArmのIoT(モノのインターネット)端末向けテストチップ「Musca-S1」や、ソニーセミコンダクタソリューションズのGPSレシーバーIC「CXD5605」にMRAMが用いられている。TSMCやSamsung Electronicsは、スピントロニクス半導体を使ったMRAMを2018年から量産している。
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