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主要なワイヤレスIoT技術を一社で 「ワンストップショップ」化で市場に攻勢をかけるNordic Semiconductor CEO Svenn-Tore Larsen氏

低消費電力の無線ソリューションに特化し、特にBluetooth Low Energy向けワイヤレスSoC(System on Chip)では世界トップレベルのシェアを誇るノルウェーのNordic Semiconductor。同社はセルラーIoT(モノのインターネット)やWi-Fi、Matter、Threadなど、主要な標準規格ベースの低消費電力ワイヤレスIoTコネクティビティーソリューションをワンストップで提供する企業に進化しているという。今回、同社CEO(最高経営責任者)のSvenn-Tore Larsen氏に、同社の強みや戦略を聞いた。

» 2024年01月11日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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電源管理ICにも参入、IoTの「ソリューションプロバイダー」へ

――Nordicの現状や目指している方向性について説明してください。

Svenn-Tore Larsen氏 創立40周年を迎える当社は世界トップレベルのBluetoothソリューションプロバイダーであり、欧州で有数の成功を収めているファブレス半導体企業の一社だ。

 当社はBluetooth Low Energy分野における成功で知られているが、それだけにとどまらずIoT(モノのインターネット)向けの低消費電力ワイヤレスコネクティビティーソリューションのグローバルリーダーとして、製品やサポートソリューションの品ぞろえを充実させ、拡大を続けている。Bluetoothの他、セルラーIoT(NB-IoT/LTE-M)、DECT NR+、Wi-Fi、Matter、Thread、Amazon Sidewalk、ZigBeeなど、主要な低消費電力ワイヤレス通信の標準規格をカバーしている。

 ワイヤレス半導体だけでなく、補完的なコンポーネントやクラウドサービス、技術サポート、超低消費電力と設計の容易さに最適化されたシームレスなソフトウェアと開発ツールの拡充を加速する方針だ。

 最近の代表例としては、Nordicの電源管理IC市場への参入が挙げられる。当社の最大の強みである、超低消費電力ワイヤレスに最適化されたPMICを提供するのに最も適した立場にあるのは当社自身なのだ。当社が2.4GHzワイヤレスレンジエクステンダーを提供するようになったのも同じ理由だ。

 Bluetoothワイヤレスコネクティビティー企業からIoTソリューションプロバイダーになるには、解決する問題をより包括的に見る必要がある。つまり、バッテリー、アンテナ、センサー、ワイヤレス半導体、電源管理まで責任を持つということだ。

――Nordicが成長を続けられている理由をどう分析していますか。

Larsen氏 当社が40年間立ち止まることなく、世界トップレベルのワイヤレスIoTコネクティビティー企業になるために必要な基盤を築いてきたからだ。

 1983年にNordic VLSIという名で創業した当社は、まずミックスドシグナルASIC(特定用途向け集積回路)のコンサルタントサービスを展開し、後に高性能データコンバーターへと事業を拡大した。ワイヤレス設計は、エレクトロニクスエンジニアリングの中でも特に困難な分野だ。最も重要な部分の一つはアナログとデジタルの信号をいかにうまく混合するかということ。当社は最初の20年間を費やしてこれらに関して非常に高度な専門知識とスキルを身に付けた。

 2004年に現在の社名に改め、サービスサプライヤーからワイヤレスコンポーネントのサプライヤーに生まれ変わった。40年間変わらないのは、当社の野心、開発者へのコミットメント、研究開発への集中、そして革新的な製品を生み出すために必要なエンジニアリングチームだ。これらは全て、当社の顧客に対する超高水準の技術サポートによって支えられている。

設計時の複雑さを排除して、顧客の負担を減らす

――なぜ複数のワイヤレスIoT技術ソリューションを提供しているのでしょうか。

Larsen氏 1つのワイヤレスIoT技術だけでは、あらゆるアプリケーションのニーズを満たし、全ての顧客が抱える課題を解決できないからだ。当社は、さまざまなワイヤレスIoTコネクティビティーのソリューションとオプションを一社で提供する「ワンストップショップ」になることを目指している。

 何より重要なのは、実際に使用されるワイヤレスIoT技術にとらわれず、単一の開発環境を使って技術を「ミックス&マッチ」できる能力を顧客に提供することだ。

――「サプライチェーンやツールチェーン全体を所有する」ことを重視しているのはなぜですか。

Larsen氏 当社は以前から、異なるワイヤレス技術製品に単一の開発プラットフォームを使用するなど、「顧客にとって不必要なレベルの複雑さをできる限り排除すること」をセールスポイントとして掲げてきた。

 この思想を、ワイヤレスIoTコネクティビティー製品をサポートするためのコンポーネント、ソフトウェア、サービスにも広げている。また、常にプロトコルスタックを自社開発してきた。

 最終的に目指すのは、開発時の技術的な問題を最小限に抑えることとチップの統合を極限まで進めて超低消費電力に最適化し、動作の信頼性に関して最高のものを提供することだ。当社にとってこれは、組み込みツールチェーンを可能な限り自社で所有することを意味している。組み込みメモリやAI(人工知能)分野における最近の買収も、この考えが反映されたものだ。

技術を再定義する革新的な製品を生み出すNordic

――Nordicは5年前からセルラーIoT市場に参入していますが、同市場におけるNordicの強みを聞かせてください。

Larsen氏 当社は、セルラーIoTの市場が確立される前、そして同技術をサポートするために必要なセルラーインフラが十分に構築される前の2018年に市場に参入した。そのため、世界をリードするソリューションをじっくりと時間をかけて一から構築できた。

 当社はLTE-M/NB-IoT向けSiP(System in Package)「nRF91」シリーズによって、セルラーIoTで何が可能なのかを再定義した。nRF91シリーズは低消費電力かつ高集積、高性能を実現した革新的なセルラーIoT向けシリコンソリューションだ。

――どのようにしてサプライチェーンの安定性を確保し、混乱に対処しているのでしょうか。

Larsen氏 他のファブレス半導体企業と同様に世界的なファウンドリー企業に依存しているが、当社は複数のファウンドリーと提携することで多様化を図っている。

 例えば、当社の最新のBluetooth SoC(System on Chip)である「nRF54H20」などの「nRF54H」シリーズはGlobalFoundriesで生産し、「nRF54L15」などの「nRF54L」シリーズはTSMCで生産する。

――革新的な製品を開発し続ける原動力は何でしょうか。製品の特徴も教えてください。

Larsen氏 ワイヤレスIoTコネクティビティーの研究開発に向けた多額の投資が、市場をリードする製品を継続的にリリースする原動力になっている。

 2012年に発表したBluetooth SoC「nRF51」シリーズは強力なオンボードArmプロセッサを初めて採用し、大容量の組み込みメモリを搭載するなど、それまで前例がなかったさまざまな進化を実現してBluetoothワイヤレスコネクティビティーを再定義した。そして現在、最先端の「nRF91」シリーズによってセルラーIoTの可能性を再定義している。

 nRF51シリーズはその後、「nRF52」「nRF53」、nRF54H20などのnRF54HシリーズやnRF54L15を含むnRF54Lシリーズへと拡張された。最新のnRF54L/nRF54HシリーズはBluetooth Low Energyを使ってどのような製品やアプリケーションを構築できるかを再定義するものだ。

最新のBluetooth SoC「nRF54シリーズ」 提供:Nordic Semiconductor ASA 最新のBluetooth SoC「nRF54シリーズ」 提供:Nordic Semiconductor ASA

 当社の顧客にとって最も重要なのは、当社のデバイスの多くが将来の世代へのアップグレードに対応できる能力を備えているということだ。こうした将来性は、顧客にとって大幅なコスト削減と市場投入までの時間短縮という競争上の優位性をもたらすことになる。

――RISC-Vに積極的に取り組む理由は?

Larsen氏 当社は最近、RISC-Vの採用を推進する半導体企業の業界コンソーシアムに参加することを発表した。当社がオープンソースチップアーキテクチャの開発と採用に技術的/商業的に全面的に協力すると発表したことは、当社とArmとの長期的な関係に疑問を投げ掛けるかもしれない。

 RISC-VはArmを補完するものであり、脅威ではないと当社は考えている。Armが伝統的に支配的であった消費電力が重要なモバイルおよびIoTアプリケーションにおいて特に当てはまる。

 RISC-Vの核心は、オープンソースのチップアーキテクチャに基づいてカスタマイズされた最先端のハードウェアを開発する能力をユーザーに提供し、イノベーションを促進することにある。RISC-Vの採用は、高度に専門化された特定のアプリケーションにおいて、命令セットを削減し、圧倒的な低消費電力を実現する自由と柔軟性をもたらすだろう。

 2002年からCEOとして同社を率いてきたSvenn-Tore Larsen氏は2023年12月31日をもって退任し、2024年1月1日付でVegard Wollan氏が新CEOに就任した。ニュースリリースはこちら


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提供:Nordic Semiconductor ASA
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月9日

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