オンセミ(onsemi)は、パワーデバイスとイメージセンサーを核に自動車/産業用市場のニーズに応えるという事業戦略の下、事業規模を順調に拡大させている。普及著しいSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの供給能力増強など積極的な投資でさらなる需要拡大に備える。「国内でもオンセミの技術、製品への引き合いが急増している。2024年はしっかりとデザインウインにつなげていく」と語る日本法人社長の林孝浩氏にインタビューした。
――2023年を振り返ってください。
林孝浩氏 非常に充実した1年だった。既に公表している2023年1〜9月の業績は非常に堅調で、前年同期実績を上回った。2023年7〜9月期の全社売上高は21億8000万米ドルで、特に自動車関連の売上高は前年同期から33%も伸びて全社売上高の53%を占めるまでに成長した。
――日本法人の2023年業績はいかがでしたか。
林氏 日本法人としても、2023年1〜9月売上高は前年同期実績を上回った。2023年は売り上げ成長に加え、デザインオポチュニティー(デザイン提案機会)を前年比で70%ほど増加させることができ、将来の事業成長に向けても良い1年になった。
――業績好調の要因はどのように分析されていますか。
林氏 オンセミは「パワーデバイス」と「イメージセンサー」という2つのコア技術に投資し、自動車市場と産業用市場に新たな技術/製品を提供するという事業戦略を実践している。
パワーデバイスは自動車の電動化、イメージセンサーはADAS(先進運転支援システム)/自動運転システムの普及という自動車業界のメガトレンドによって需要が大きく拡大している。自動車業界のメガトレンドとオンセミの事業戦略が合致したことで、事業成長を果たせていると考えている。
日本市場に限っても、国内自動車メーカーの電動化が本格化してきていることが売り上げ増とビジネスオポチュニティーの増加につながっている。
――パワーデバイス、イメージセンサーともに競合がひしめく競争の激しい市場です。その中で、なぜオンセミはシェアを維持、向上させることができているのでしょうか。
林氏 パワーデバイスについては、電力損失を大幅に改善できる次世代パワー半導体であるSiCで4つの優位性を発揮できていると考えている。「サプライ(供給体制)」「スケール(量産規模)」「製品展開範囲」「卓越した技術」の4つだ。
特に供給体制は、SiCパウダーからSiCブール(SiCインゴット)を作り、ウエハーを切り出してデバイスやモジュールに仕上げる完全な垂直統合型の体制を構築している。
SiCブールは製造に時間を要する工程で、SiCパワーデバイスの需要が拡大している中で、安定供給のために最も重要な工程となる。オンセミは2021年にSiCブールメーカーのGT Advanced Technologies(GTAT)を買収し、SiCブールの自社生産能力をそれまでの10倍に引き上げた。SiCウエハー工場としても韓国・富川工場の拡張工事が完了し、フル稼働時は8インチウエハー換算で年間100万枚以上のSiCウエハーを生産できるようになった。
パウダーからデバイス、モジュールまでの大規模な一貫生産体制はオンセミの大きな強みであり、自動車市場や産業用市場で重視される安定供給というニーズに応えられている。
――パワーデバイスの製品展開について教えてください。
林氏 自動車市場と産業用市場に、SiCパワーデバイスだけでなくSiを用いたIGBTやパワーMOSFETなどを幅広く展開している。
SiC-MOSFETについては、EliteSiCファミリーの第3世代品を展開している。2023年5月には電気自動車用の「1200V EliteSiC M3Sデバイス」を発売するなどしている。第3世代のEliteSiCは、既に多数の自動車メーカー、Tier 1企業に採用が決定しており、さらに第4世代、第5世代と現在のスペックを上回る製品の投入を予定している。
――イメージセンサーの強みについて教えてください。
林氏 イメージセンサーはターゲットにしている自動車市場で世界ナンバーワンシェア*を維持している。
オンセミのイメージセンサー製品ファミリー「Hyperlux」は、小型で軽量という特徴を持つ。ハイダイナミックレンジを実現し、逆光下でも信号の色を確実に捉えるといったADAS/自動運転システムで重要な性能も満たしている。
パワーデバイス同様、自動車市場と産業用市場のニーズに即した製品を提供していることが高いシェアの獲得につながっている。
*)TSR:Automotive Camera Market Analysis 2021-2022
――日本市場での今後の事業方針について教えてください。
林氏 オンセミがターゲットにする自動車と産業機器は日本に大きな市場があり、オンセミにとって重要だ。
日本には、営業拠点だけでなく会津工場という生産拠点、群馬デザインセンター、岐阜デザインセンターという2つの開発拠点があり、日本国内に約1,000名の従業員がいる。国内に生産拠点と開発拠点を有する外資系半導体メーカーは少なく、オンセミが日本を重視していることの表れの一つだ。
自動車の電動化やADAS/自動運転システムの普及などで、2023年に急増したデザインオポチュニティーを2024年はデザインウインにしっかりとつなげていく。国内のデザインセンターなども活用して付加価値の高いサポートを提供し、顧客の差別化と競合優位性の向上に貢献する。
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提供:オンセミ
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月9日