ジャパンディスプレイ(JDI)は2024年2月6日、有機光検出器センサーを搭載したスマートリングを使った健康見守りサービス「Virgo(ヴァ―ゴ)」を発表した。2024年2月から企業/団体向けにトライアル提供を開始する。
ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は2024年2月6日、スマートリングを使った健康見守りサービス「Virgo(ヴァ―ゴ)」を発表した。
スマートリングには、フレキシブル基板上に形成した有機光検出器(OPD:Organic Photo Detector)生体センサーを「世界で初めて」(同社)搭載したという。Virgoでは、心拍数、血中酸素ウェルネス、睡眠時間、歩数、消費カロリーなどの日常における健康管理に必要なライフログをスマートリングで自動的に取得し、スマートリングと連携したスマートフォンアプリやクラウドからデータを確認できる。これにより、未病段階での健康改善行動を促進することが狙いだ。
OPDは、さまざまな基板上でプリントフォトダイオードを統合して大面積イメージセンサーを実現する技術だ。今回、JDIはフレキシブル基板上に実装することで、「他社従来製品と比較して、薄型/軽量な指輪型デバイスの実現に成功した」(同社)という。スマートリングには、OPDセンサーの他、モーションセンサーやマイコン、メモリ、LED(赤色/緑色/赤外線)などが内蔵されている。
耐環境性能については今後検証する予定だが、風呂や水仕事などの生活防水には対応しているという。スマートリングの具体的な素材については「非公開」(同社)としつつ、「ディスプレイで培った技術/材料を応用している」と補足した。
主なターゲットは国内の運送/交通運輸業や製造業、医療分野などを想定している。スマートリングは、国内の既存工場で製造する予定だ。
JDIの社員200人を対象に行った実験では、対象者のうち20%に、専門機関の受診など健康意識の向上が見られたという。同社は、2024年2月から企業/団体向けにVirgoのトライアル提供を開始。2024年内にも本格的なサービス提供を開始し、5年後に100万人のアクティブユーザーを獲得することを目指す。
JDIの代表執行役会長 CEOのスコット・キャロン氏は、Virgoの特長について「スマートリングは非常に軽量で、高精度なセンシングが可能だ。B2B(Business to Business)での活用を前提としたサービスのため、従業員数百人単位の日常的な健康管理の可視化に貢献する」とした。また、スマートリング市場に参入する背景については「JDIはここ数年赤字が続いていて、社会的な責任を果たすために新たな挑戦が必要な状況だ。JDIが培ってきたディスプレイ技術はセンサーとの親和性が高いことや、『物流の2024年問題』*)などを踏まえた上で、市場参入を決めた」(同氏)と語った。
*)2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されることで懸念される物流の停滞などの問題の総称
JDIは2024年2月から、岡山大学、あいおいニッセイ同和損害保険、ヴェルト、両備ハッピーライフ健康づくりセンターらと共同で、運送/交通運輸業界におけるドライバーの健康促進を目的とした共同研究を開始する。
共同研究では、両備グループのドライバー30人に、JDIが提供するVirgoのスマートリングや、あいおいニッセイ同和損保が貸与するスマートウォッチを装着してもらい、バイタルデータなどを取得する。また、運転車両にあいおいニッセイ同和損保が貸与する通信機能付きデバイスを搭載し、走行データを取得する。取得したデータの分析は、岡山大学を中心に分析し、健康状態や生活習慣が運転に与える影響を検証する。1回の検証期間は3カ月で、これを1年間(計4回)繰り返し、2025年3月までに120人分のデータの分析を行う。
共同研究の目的や背景についてキャロン氏は「ドライバーの健康状態に起因する交通事故の発生件数は高止まりの状況にある。ドライバーの運転寿命の延伸と健康促進を目的として今回の共同研究を行う」と述べた。
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